米ロックミュージシャン、デービッド・クロスビーの訃報(享年81)に接し、彼がいたクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)のアルバム「デジャ・ヴ」(1970年)を改めて聴いた。美しく、力強い10曲の輝きは今も失われていない。その中でデービッド・クロスビーの楽曲は情念に駆られたような歌声とサイケデリックな雰囲気が持ち味。長髪に鼻ひげというヒッピーのような当時の風貌と相まって、独特の個性を印象づける。

CSN&Yは、元バーズのデービッド・クロスビー、元バッファロー・スプリングフィールドのスティーブン・スティルス、英国の元ホリーズのグラハム・ナッシュの3人が1969年に結成したクロスビー、スティルス&ナッシュ(CS&N)に、ニール・ヤングが加わった4人のスーパーグループ。「デジャ・ヴ」はロック史に残る名盤と高く評価されている。

彼らの音楽に初めて触れたのは米ヒットチャートを追いかけていた中学生時代の1982年。チャート入りしたCS&Nのシングル「時は流れても」、続く「サザン・クロス」に引かれて、2曲の入ったアルバム「デイライト・アゲイン」を買った。LPレコードのライナーノーツを読んで、名だたるバンドにいた3人であることを知り、背伸びして大人のロックに聴き入った。CDの時代になると、CD化された過去の作品へとさかのぼった。
アルバム「デイライト・アゲイン」ではシングルヒットした先の2曲はもちろん、デービッド・クロスビーが歌う「デルタ」と「ハヴ・ア・グッド・タイム」も好きだ。どちらもクロスビーの優しく包み込むような歌声が心に響くバラード。「デジャ・ヴ」の頃と違って、とても穏やかな歌声で、静かに存在感を放っている。ただ、アルバムの11曲中、クロスビーが歌うのはこの2曲だけで、ほかの2人に比べて少ない。当時、彼は長年のドラッグ生活がたたって音楽活動が十分にできるような状態ではなかったためだという。

その後クロスビーは立ち直り、1988年に4人が再び結集してCNS&Yとしてアルバム「アメリカン・ドリーム」を発表した。翌89年には、18年ぶり2作目のソロアルバム「オー・イエス・アイ・キャン」をリリース。再起を祝うかのようにジェームス・テーラー、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイットらそうそうたる顔ぶれがゲスト参加したソロ作品は、サイケなロックやブルージーなロックが聴けるが、やはり優しい歌声が生きるタイトル曲などのバラードに引かれた。93年のソロ3作目「サウザンド・ローズ」はフィル・コリンズと共作、デュエットした曲などで構成。ボーカリストとしての魅力を引き出した、耳に心地よい作品だった。

それから20年以上を経た2014年にソロ4作目の「クロズ」を発表し、10~20年代にライブ盤も含め計6枚ものアルバムを出していたことを、このたびの訃報を機に知った。いずれの作品もレビューに称賛が多い。あの美声に耳を傾けてみたい。(洋)
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