1990年代ロックのカリスマを挙げるならナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーは外せない。98年のビデオ「クロージャー」は当時、過激すぎて日本盤未発売。通販で海外盤を取り寄せた記憶がある。
収録されたライブ映像にあぜんとした。嫌がるメンバーに体当たりしては客席にダイブさせるトレント。振り回したマイクスタンドが頭に直撃したドラマーは流れる血をタオルで押さえながらたたき続けていた。一方で雑誌のインタビューに「海辺でピアノと犬と一緒に、静かに暮らしたい」と答えるギャップにもえた。

曲のテーマは自己嫌悪や破壊衝動ばかりだった。94年のアルバム「ダウンワード・スパイラル」をよく聴いた。収録曲「マーチ・オブ・ザ・ピッグス」は爆音の中で一瞬、ピアノとボーカルの甘いメロディーが挟まれる。そしてまた、われに返ったように爆音をぶちまける。「まだ感覚が残っているかどうか、試しに自分を傷つけてみた」との一節で始まるラストのバラード「ハート」は静かな狂気をはらみつつ盛り上がっていき、最後はやっぱりノイズに包まれて終わる。
近年はデビッド・フィンチャー監督作など映画音楽で活躍が華々しい。だが鬱屈(うっくつ)した感情に寄り添い、多くの少年少女を暗黒面に引きずり込んだ初期の激しさが忘れられない。 (銭)
<Sデジオリジナルも ナイン・インチ・ネイルズ>
Sデジ(デジタル版)では別の執筆者がナイン・インチ・ネイルズについて書いています。
→ https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/334280
【コラボしています】エフエム山陰 SUN-IN MORNING(朝7時半~9時)
<投稿募集中!>
海外のロック、ポップスについて読者の投稿も歓迎します。オールディーズから最新ヒットまで、大好きな歌やアーティストのこと、思い出のエピソードなどを自由にどうぞ。
>> 投稿はこちらから