1957年のビルボード50位以内にR&B(リズム・アンド・ブルース)は13曲がランクインしているが、その中で最高位は18位デル・ヴァイキングスの「カム・ゴー・ウィズ・ミー」。ピークで4位を記録し、ゴールド・ディスクにも輝いた。後にビーチ・ボーイズなどもカバーし、映画「アメリカン・グラフティ」や「スタンド・バイ・ミー」などで流れたこともあるので、聴いたことがある人も多いのでは。ドゥワップ・コーラスだが、なじみやすいポップスのスタイルを取っていて、ドゥワップには定番かつ必須な、楽器のベースを模したバス・パートや「ワ、ワ、ワ、ワ」的コーラス、そしてお決まりのコール・アンド・レスポンス(掛け合い)やハンド・クラップ(手拍子)もしっかり踏襲している。

 20位はサム・クックの「ユー・センド・ミー」。クック調と呼ばれ幾分鼻にかかった歌唱法を駆使してR&Bのスターとなったサム・クック。彼にとってはソロデビュー後間もない時期の楽曲で、作詞作曲は本人の手によるもの。「カム・ゴー・ウィズ・ミー」同様、シンプルな循環コードで構成され、ブラシを使ったドラミングやツボを得たギター・フレーズ、出しゃばらないコーラスなど控え目な演奏が都会的で洗練された雰囲気を醸し出している。

 白人のジェリー・リーバーとマイク・ストーラーが書き、黒人グループのコースターズが歌った「サーチン」が21位。前出の2曲とはまるで異なり、リズムやビートが強調された曲。歌われている内容は、どこかへ行ってしまった彼女を再び自分の元へ連れ帰ってみせる、と大見えを切ったもの。その捜索は有名な探偵、シャーロック・ホームズやサム・スペードやチャーリー・チャンたちだって不可能で自分だけにしかできないのだそうな。この曲も含めてR&Bの演奏にはピアノが大きな役割を果たしている。打楽器のように鍵盤をたたいたり、コードを細かく刻んだり、合いの手のフレーズを入れたりと存在感を示すことが多々ある。ファッツ・ドミノやリトル・リチャード、レイ・チャールズなどピアノを演奏しながら歌うアーティストは多い。

 19位を除いて18位から21位まではR&Bだったが、続く22位も黒人アーティスト、チャック・ベリーの「スクール・デイズ」が続く。ギブソンES350Tを弾きながら腰をかがめてステップするダック・ウオークでツトに知られるが、この曲も含めてベリーの曲がR&Bなのかロックンロールなのかは意見が分かれるところだ。一般的にはロックンロールのカテゴリーに入れられることが多いが、ここでは黒人アーティストが奏でるブルース系サウンドはR&Bとしたので、このように位置付けてみた。ちなみに前年には「ベートーベンをぶっ飛ばせ」、この年も「ロックンロール・ミュージック」のヒットを輩出しており、かのジョン・レノンもビートルズ時代はこの2曲をレパートリーに加えていたほど注目されていたアーティストだった。

 少し順位は飛ぶが、38位、48位、50位はファッツ・ドミノの曲。順に「アイム・ウォーキング」「ブルーベリー・ヒル」「ブルー・マンデー」である。「ブルーベリー・ヒル」は前年も41位だったので、1年たった後も根強い人気を保っていたことがうかがい知れる。「アイム・ウォーキング」は典型的なロックンロール調の曲で演奏を通じてハンド・クラップでノリを誘い、間奏ではリトル・リチャードのレコーディングにも参加しているリー・アレンのテナーサックスでさらに盛り上げる、といった趣向だ。「ブル・マンデー」は他のアーティストのカバー。ここでも間奏はサックスが担当しているが、テナーではなくバリトン・サックスで、演奏しているのはアレンとともに管楽器奏者として名の知れていたハーバート・ハーデスティ。

 この他に、40位ナットキング・コールの「センド・フォー・ミー」、45位ビリー・ウイリアムズ(の長いタイトル)「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・ライト・マイセルフ・ア・レター」、47位ボベッツ「ミスター・リー」などがあるが、35位「シルエッツ」は、コースターズと同じくドゥワップ・グループ、レイズのコーラスが聴きもの。4人組の白人グループ、ダイヤモンズとの競作になったが、オリジナルを歌ったチームがめでたく50位以内をゲットした。後の65年になって、ピーター・ヌーンを擁した英国のハーマンズ・ハーミッツがカバーし、ブリティッシュ・インヴェイジョン(※)の波に乗って米国でもピークで5位になるほどのヒットとなった。

 次回は、ランクの多くを占めるポピュラー&ポップスのカテゴリーから、後年よく知られるようになったタイトルを中心に取り上げてみたい。(オールディーズK)
   =読者投稿=

(※)ブリティッシュ・インヴェイジョン 1964年から66年にかけて英国の音楽アーティストが米国に進出し、全米チャートを席巻してポピュラー音楽シーンに多大な影響を与えた文化現象。ビートルズが代表格。