キューバの太鼓、コンガ奏者サブー・マルティネスのアルバム「パロ・コンゴ」(1957年)はジャズの名門レーベル・ブルーノートが放った異色作だ。キューバの複弦ギター、トレスの巨匠アルセニオ・ロドリゲスと共演し、完全にラテン音楽の趣。これもジャズだというところに、ジャズの懐の深さを感じる。
米国の若手演奏家だったサブーとキューバ音楽の第一人者の共演がなぜ実現したのかも興味深い。ジャズドラムの大御所アート・ブレイキーにかわいがられたという才能を買われてか。

収録曲「エル・クンバンチェロ」が最高だ。日本でもなじみ深いラテンの定番曲だが、熱量が違う。コンガ連打はもちろん、サブーのボーカルがいい。ルルララルルララルルララルルララ…と即興で歌うところはよく舌が回るなと思うほど早口でインパクトがある。後半はアルセニオのトレスが前面に出て盛り上げる。
他の収録曲は、同じフレーズの繰り返しがくせになる「チョフェリート・プレーナ」、トレスが存分に味わえる「素晴らしき幻想」がお勧めだ。
ジャズピアノ奏者ホレス・シルバーのアルバム「ホレス・シルバー・トリオ&アート・ブレイキー、サブー」(53年)収録の「メッセージ・フロム・ケニア」でサブーとブレイキーのコンガ×ドラム対決も熱い。

サブーにはラテン音楽好きの父の影響で子どもの頃からなじみがある。「中南米の旅」というラジオ番組から父が録音したカセットテープをよく聴かされ「エル・クンバンチェロ」の歌詞を覚えたほど。
キューバ音楽を取り込んだジャズと言えば、パーカション奏者ダニエル・ポンセの「シボネイ」(83年のアルバム「ニューヨーク・ナウ!」に収録)も意表を突く。哀愁漂うラテンの定番曲で、メキシコのギター3人組トリオ・ロス・パンチョスの演奏が有名だが、ポンセ版はまるでチンドン屋。ドンチンチン、ドンチンチン…と太鼓やかねが鳴り響く中、サックスが即興を交えて歌のメロディーを奏でる。
フラメンコでもキューバ音楽と融合した演奏形式が生まれ、ギター奏者パコ・デ・ルシアが打楽器を伴奏に入れて発展させた。キューバ出身の歌手グロリア・エステファン(マイアミ・サウンド・マシーン)は古里の音楽を取り入れ、ラテンポップを開拓した。コンガが象徴するキューバのリズムは音楽を豊かにする。
(志)
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