古代人にとって、酒造りの発酵作用は、さぞかし神秘的なものであったはずだ。神酒(みき)の醸造は神々のなせる業(わざ)であり、清浄性と神聖性が尊ばれ、選ばれた人が従事すべきものと考えられていた。

 日本神話をひもとけば、神酒には高い霊性や呪術力などが宿り、酒造りも神事として観念されていたことが分かる。代表的な神話伝...