「今まさに、十全な北斎理解を得るために改めて、主だった作品各々のもつ本質を捉えなおし、人間北斎の理想がどのようなものだったのかを、探る時機が到来しているのではないだろうか。」(『葛飾北斎の本懐(角川選書584)』)
島根県津和野町出身の北斎研究者・永田生慈(ながたせいじ)氏(1951~2018年)が、病で亡くなる前年の2017年に書きのこした言葉である。同年、氏は研究のために収集した総数2398件から成る「永田コレクション」を島根県へ寄贈された。北斎の特定の時期、分野、画題に偏ることなく、北斎が歩んだ画家としての人生全...