政府が新型コロナウイルス対策のマスク着用を個人の判断とするよう緩和した13日、山陰両県の通勤通学者や観光客などは多くが着用を続け、「脱マスク」初日は慎重な出足となった。
午前7時ごろのJR松江駅(松江市朝日町)構内。慌ただしく改札をくぐるビジネスマンや学生はマスク着用者が大半で、外した人をほぼ見かけなかった。通勤途中だった松江市西生馬町の会社員田村亮一さん(28)は、職場が13日以降も就業時間中の着用を義務付けており、通勤中に「わざわざ外さなくてもいいと思う」と話した。
0~5歳児を預かるあおぞら保育園(松江市学園2丁目)では、この日もマスクを着けて歌い遊ぶ園児の姿があった。屋外で遊ぶ際は外すが、卒園式が間近でリスクを最小限に抑えようと屋内では着用を続ける。ただ、マスクをすると保育現場で重要な園児の表情が分かりづらく、運営法人・ねむの木福祉会の浅津寿広理事長(65)は状況を見て緩和する考え。「着用の見直しはコロナ前へ戻る一歩」と前向きに捉えた。
「本当は今すぐ外したいが着用が癖になっている」と話すのは、浜田市港町のゆめタウン浜田で買い物していた同市国分町、パート従業員山口知江子さん(73)。食品製造業に携わる関係で仕事中も常に着ける。「コロナが収まるまで、この状況は変わらない気がする」と苦笑した。
政府の指針では感染時のリスクが高い医療機関の受診時や、混雑したバス、電車といった公共交通機関を利用する際には着用を推奨するなど、13日以降も臨機応変な判断を求めている。
境港市の観光スポット、水木しげるロードを散策する観光客も着用者が多かった。そんな中、大学の卒業旅行で友人3人と名古屋市から訪れたという安藤未裕さん(22)は、仲間内で唯一、マスクをしていなかった。記念撮影を楽しみ「これまで記念写真は全てマスク着用で残念だった。外すと表情が分かっていい」と笑顔で動き回った。
「息苦しいので、外ではもう着けない」。言葉に実感がこもるのは、着用せずJR出雲市駅(出雲市駅北町)周辺を歩いていた同市今市町の柳楽清子さん(90)だ。それでもマスクは持ち歩き、密集の具合や自身の体調を考慮し着ける時は着けるという。「人混みはまだ怖い」 (取材班)