献血しながらテレビを観賞する記者=松江市大輪町、島根県赤十字血液センター
献血しながらテレビを観賞する記者=松江市大輪町、島根県赤十字血液センター

 新型コロナウイルス禍や寒波の影響で、献血者が減少しているという。献血に行くと、飲み物やお菓子がもらえる上、優しく丁寧な対応を受ける。仕事で疲れた身には癒しの時間になる。献血を経験したことがない人に向けて、献血をする場合の流れを紹介する。(邑南通信部・吉野仁士)

 

 献血は治療や手術などで使う輸血用の血液を無償で提供すること。各地域にある献血ルームや地域を走る献血バスなどで得た血液は各地にある血液センターに送られ、検査した上で医療機関へ供給されたり、製薬会社の製剤の原料として役立てられたりする。

 記者は2022年1月、ショッピングセンターで献血の呼び込みをしているのに出会い、初めて献血を体験した。こちらが血液を提供する側だとはいえ、終始、多くの人に「ご協力ありがとうございます」と言われるので、ちょっと照れくさい。さらに飲み物やお菓子が(常識の範囲で)もらえ、採血中には漫画も読める。記者にとって、休日に家でごろごろする程度の予定しかなければ、感謝され、お菓子ももらえて、漫画も読める献血に行く方がよほど有意義に思えた。

 

 ▼コロナや寒波で状況厳しく

 献血ルームがある島根県赤十字血液センター(松江市大輪町)を3月8日、訪れた。

 センター献血推進課の松田清課長(59)によると、20年のコロナ流行以降、献血は厳しい状況が続くという。これまで、献血バスで地域のイベントや学校に出向いていたが、コロナによるイベント自粛や休校で、受け入れできる場所が激減した。また、コロナの感染者には献血の制約があり、症状消失後4週間、濃厚接触者は2週間が経過しなければ献血できないルール。

 今回はこれに寒波も追い打ちをかけ、センターでの献血者数は22年12月が前年同月比106人減の210人、23年1月は同61人減の210人だった。2月はコロナの感染状況が落ち着いたため各地に出向く献血バスを増やし、なんとか前年を上回る血液を確保したが、依然として状況は芳しくない。

島根県赤十字血液センターのウェブサイトに掲載された、2月の献血状況の呼びかけ。全ての型が不足していた(同センター提供)

 また、これからの年度末は企業や自治体が繁忙期を迎えるため、献血バスの受け入れが再び難しくなる見通しだという。松田課長は「献血していただいた血液にも有効期間があるため定期的な献血が必要で、常に協力のお願いを続けている状況だ」と窮状を訴えた。

 

 ▼いざ、献血を

 これからの時期、献血が不足するということは、裏を返せばこれから献血に行けばそれだけ歓迎されるということ。初めて献血をする人にとっては「狙い目」だ。再び「癒し」を味わおうと、記者も献血をしてみた。

島根県赤十字血液センターの待合室。テレビはもちろん、近くの棚には漫画もあり、リラックスして待機できる
設置されている自販機ではどれでも飲み放題だ

 まずは受付で献血の種類を選ぶ。献血には血液中の全ての成分を採血する「全血献血」と、血小板や血漿(けっしょう)だけを採血する「成分献血」がある。献血ができる年齢や、献血にかかる時間、次に献血が可能になるまでの間隔といった点に違いがあるが、採血される側にとっては大きな差はない。

 全血献血は200ミリ一トルと400ミリリットルを選ぶことができる。基本的には400ミリリットルが推奨されているため、400ミリリットルを選んだ。今回は窓口受け付けだったが、センターはホームページやフリーダイヤル(0120・23・9469)での事前予約を推奨している。初めて献血をする人は、氏名や住所などの登録作業が加わる。

タブレットによる問診。23個の簡単な質問に答えるだけなので1分程度で終わる
その後、直接の問診も受ける記者(中央)。専門的な視点からも健康状態などをチェックしてもらえるから安心だ

 その後、体重と血圧を測り、タブレットで健康状態や病歴などに関する問診を受け、簡易な血液検査で赤血球の濃度を確認。献血の基準を満たしているか、輸血しても問題がない血液かどうかを入念にチェックする。これが終われば、採血の準備が整うまで、待合室にある無料自販機でジュースを飲むのも、漫画を読むのも自由だ。

 

 ▼採血中はテレビや漫画、動画も自由

 10分程度で採血室に呼ばれ、採血ベッドに横になる。目の前には小型テレビがあり、耳元にあるスピーカーからテレビの音が聞こえる。健康診断でする採血と同じ要領で腕の血管に針を刺し、採血が始まった。

テレビを見ながらリラックスした様子で献血をする記者。針を刺す時のちょっとした痛み以外は何一つ不満がない快適さだ

 記者は職業柄、ずっとテレビでワイドショーニュースを見ていたが、採血室に漫画を持ち込む人、センターのフリーWi―Fiを使ってスマートフォンで動画を見る人など、過ごし方はさまざまだという。また、採血中は足を交差してピンと伸ばす運動を推奨される。全身の血流を良くし、血圧の低下を防ぐためのものだという。

献血中、笑顔で撮影に応じる記者。丁寧な対応を受けて上機嫌そう

 全血献血は10~15分、成分献血は40~90分程度かかるそうだが、全血献血の記者は5分強で終わった。対応した職員に「血液の出が良い」とほめられ(?)、すがすがしい気持ちで終えることができた。

 体から液体400mlを抜いたため、献血直後は10~20分の休憩と水分補給が必要になる。休憩室で職員から「飲み物は好きなだけ飲んでください」と促される。言葉に甘えてお菓子とジュース2杯を楽しみながら、休憩がてら漫画を20分ほど読みふけってしまった。

お菓子とジュースを手にしながら漫画も楽しめる。あくまで仕事である記事を書くため、と言い聞かせながら20分の休憩を満喫した

 さらに、採血後はお礼としてティッシュ箱かアイスのどちらかをもらえる。献血一つでここまでぜいたくができるのか。得した気分と、微力ながらも医療に貢献できた満足感を胸に、センターを後にした。

 少し長めに休憩してしまったが、受付からセンターを出るまでの時間は40分程度で済む。たった40分だったが、人の役に立て、ちょっとしたぜいたくも味わえた。まだ献血をしたことがない人で、少しでも興味を持っている人はこの年度末、体調などに留意しながら、ぜひチャレンジすることをおすすめしたい。

 

 島根県赤十字血液センターの定休日は毎週金曜と年末年始、5月1日(創立記念日)。受け付け時間は、成分献血は午前9時〜午後0時、同1~4時、全血献血は午前9時〜午後0時、同1時~同4時半。