自宅アトリエで写真集と段ボールクラフトのSLを鑑賞する原禎幸さん=出雲市湖陵町三部
自宅アトリエで写真集と段ボールクラフトのSLを鑑賞する原禎幸さん=出雲市湖陵町三部

 【出雲】段ボールクラフト作家として島根県内外で個展を開く原禎幸さん(66)=出雲市湖陵町三部=が、元国鉄職員の経験を生かし、蒸気機関車(SL)の作品を制作した。自ら乗務した木次線の快速「ちどり」号(C56形)などの作品を手掛け、「ちどり」号が載り創作の参考にしたSL写真集に載っていた同号の撮影場所と写真に写る人物も突き止めた。

 原さんは2017年から独学で段ボールクラフトを始め、出雲大社など県内の文化財を題材に制作。20年11月ごろからはSLに挑戦し、自ら機関士を務めた寝台特急「出雲」号など計5点を制作した。

 このうち、かつて山陰と山陽を結んでいた「ちどり」号の機関車部分は全長80センチ。約1カ月かけて精巧に仕上げた。

 原さんは、参考にした写真集「おじいちゃんのSLアルバム」(福音館書店)の「ちどり」号のページに写る線路脇で歩くおばあさんと子どもにも着目。現場を探した。

 探索には、線路脇にあり最寄りの駅など起点からの距離を示す「キロ標」を活用。3月から写真に載るキロ標を求めて歩き2回目の挑戦で、JR木次線の加茂中駅|南宍道駅間の雲南市加茂町砂子原で住民の協力を得てキロ標を発見。近くの民家を訪れ、当時5歳だった写真の女性(67)と会えた。

 原さんは国鉄の新人時代、「ちどり」号で木炭を運んでおり、女性との出会いを「不思議な縁」とし、「懐かしいSLを模した思い入れがある作品を見てほしい」と話している。

 SLの4点と出雲大社など計15点の作品を21日から23日まで、多伎伝習館(出雲市多伎町口田儀)で展示する。   (井上雅子)