出雲市斐川町荘原の和菓子店・吉岡製菓のもなか「モナ閣下」が人気を呼んでいる。甘いものは食べたいけど健康に気を使う若年女性をターゲットに、食後の血糖値上昇を抑える成分を含んだ機能性表示食品として3年をかけて開発。「キサマのおなかの調子を整えてやらんこともない」と挑発的なコピーとイチゴの形をしたかわいい見た目も受け、販売から3カ月で5千箱を売るヒットになった。健康にいいとはいえ、若者にはなじみの薄い「もなか」がなぜここまで売れるのか。実際に食べてみた。
(出雲総局報道部・佐野翔一)
 

人気の「モナ閣下」

 モナ閣下は、イチゴの形をしたピンクの皮で、本物のイチゴを使ったイチゴ味の餡を詰めた「もなか」。同社によると、機能性表示食品に認定された「もなか」は全国で唯一という。食後の血糖値や血中中性脂肪の上昇は肥満や生活習慣病の原因になるが、モナ閣下は、上昇を抑える食物繊維の一種「イソマルトデキストリン」を餡の中に加えた。2019年から試作を重ね、消費者庁に2022年12月に受理された。

 機能性表示食品の和菓子とは、たしかに珍しく、魅力的だが、ここまで売れているのはなぜか。理由を知りたく、5月に店舗を訪ねた。店に入ると、商品を探すまでもなく、いきなりショーケースのポップが目を引いた。「モナカは苦手?吾輩を食べてみるがいい。たぎるぞ!」。早速、商品を注文し手に取ると、パッケージを見てさらに目が釘付けとなった。「血糖値だと?何のことだ」「キサマのおなかの調子を整えてやらんこともない」。菓子名の「モナ閣下」と思われるキャラクターが描かれ、上からの目線の挑発的なキャッチコピーを発しており、思わず頬が緩んだ。

目を引くようなポップが置かれているモナ閣下の売り場

 開発者の吉岡洸専務(32)に尋ねると「ぱっと見たときに『なんだこれは』と思わせるような商品にしたかった」とパッケージへのこだわりを語った。「もなか」はどちらかと言えば、祖父母世代が煎茶や番茶と一緒に食べているイメージで、23歳の記者も、普段はあまり進んで食べようとは思わない。かつてお笑いコンビのミルクボーイがM1グランプリ決勝で、もなかをネタに「あんなに甘いくせに子どもからまったく人気がない」とネタにし、ひどくうけたことを覚えている。それを逆手に取った“偉そう”なポップやコピーには「もなかのくせに」と苦笑せずにはおられず、専務の狙いは当たったようだ。

上から目線の挑発的なキャッチコピーを発したパッケージ

 さて肝心の味はどうか。もなかは、時々食べることはあるが、何が違うのか。いちごの餡というとこともあり「甘いのかな」と思って口に運ぶと、舌触りのいい滑らかな口あたりで、餡というよりもすごく「イチゴ感」が強い。イチゴの酸味も程よくあり、とてもおいしかった。驚いたのは、皮が歯の裏につかなかったことだ。お茶がなくても、口の中は食後もすっきりしていた。

イチゴの形をしたピンクの皮にイチゴ味の餡を詰める吉川洸専務

 吉岡専務によると、砂糖や寒天でもちもちとした食感の餡にし、さらに皮の水分量を調節することで、歯の裏に付きづらいもなかに仕上げたという。「若い人にも、もなかが身近な存在になってほしい」という思いを形にした。

最後は、モナ閣下のキャラクターの焼き印をつける

 販売価格は1箱(4個入り)が税込み864円。20~40歳代の女性や、女性にプレゼントを贈る30~60歳代の男性に特に人気という。店舗のほか、同社のサイトから購入できる。吉岡専務は「3年間かけて作った自信作。多くの人に食べてもらい、もなかを広げたい」と力を込めた。

 人気の裏には、見た目や味はもちろん、従来のお菓子の常識を覆す「健康」というテーマ設定と、細かい部分まで計算されたPR戦略があった。記者も社会人2年目となり、最近はお腹が出始め、健康面が気になっている。それでも甘い物は食べたい。「モナ閣下」なら、そんな記者の「甘い」欲望を満たしてくれるかもしれない。