松江市薦津町など4町にまたがるゴルフ場「松江カントリー」跡地(約37ヘクタール)で外資系企業が予定する大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設計画の地元周知が進んでいない。一帯に数万枚規模のソーラーパネルが敷かれる見込みだが、これまでに事業者による一般住民への説明会は開かれていない。周辺に約4千人が暮らしており、地元では住民が独自に勉強会を開く動きが出始めた。(佐々木一全)
メガソーラー建設は、香港に拠点を置く投資会社PAG傘下で日本国内に計60万キロワット以上の太陽光発電所を持つPAGリニューワブルズ(東京都)が計画。詳細は策定中で、出力2万キロワットほどを見込む。日照量などの条件で異なるものの、全国の事例を見ると少なくとも数万枚規模のパネルが必要となる。住民説明会について同社は、計画の策定完了後の開催を見据えており、事業担当者は「責任ある計画が定まり次第、きちんと説明する」としている。
現時点で事業者から直接説明を受けたのは自治会役員など一部に限られ、他の住民は予定地の測量などを周知する回覧でしか、計画を知る機会がない。
「何も分からないことが一番の心配事だ」。昨年、比津町内に引っ越してきた30代女性は2月に知人から初めて事業計画の存在を聞いた。松江カントリー跡地がまたがる薦津、比津、浜佐田、東生馬の4町には約1800世帯、4千人が在住。複数の住宅団地のほか小学校、保育施設、高齢者福祉施設もある。女性には1歳の子どもがおり、工事の騒音など不安が尽きない。「現時点ではこちらの心配事を伝える機会がない。早く説明会があればいい」と願う。
地元では住民が自主的に太陽光発電事業についての知識を深めようとする動きがあり、5月21日には有志が勉強会を実施。比津町自治会も7月以降で複数回独自に開き、市担当者を交えて現時点の事業に対する市の姿勢や想定される環境面への影響などを確認する考えだ。中村清志自治会長(71)は「現時点でも計画を知らない住民が多い。事業者の動きを待つだけなく、地元もできることをやっていく」と話す。
環境影響評価法では出力30メガワット(3万キロワット)以上の太陽光発電事業が自治体首長の意見聴取といった環境影響評価の対象で、今回は該当しない。松江市は地元説明会や事業計画の進捗(しんちょく)に関する報告を事業者側に求めており、上定昭仁市長は12日の会見で「民間の事業を妨げるつもりはないが、住民の不安が置き去りにならないよう目配りをしていく」と説明している。