山陰両県内でマイナンバーカード制度に関する不安感が一因とみられるカードの自主返納が、少なくとも計30件あったことが27日、分かった。誤登録など全国でトラブルが相次ぎ、住民の不安が高まっている状況がうかがえる。(取材班)

 山陰中央新報社が島根、鳥取両県の38市町村に聞き取り調査をした。トラブルを受けて5月以降、不安感を理由に自主返納した件数は、松江市6件、倉吉市7件、浜田市5件、出雲、安来、米子各市3件、境港市2件、島根県邑南町1件-。

 ほかにも複数の自治体で、理由や時期がはっきりしない自主返納があり、返納こそないものの相談がある自治体もあった。

 マイナンバーを巡っては健康保険証とカードが一体化したマイナ保険証で、別人の医療情報が登録された事例が今年5月までに計7300件発覚。マイナポイントの別人への付与や他人の公金受取口座がひも付けられた可能性が高い事例もあった。

 「本人の希望」として返納が6件あった松江市のマイナンバーカード交付促進室の仲田雅彦室長は「返納が増えていることは制度への不安を反映していると考えられる」とし、「丁寧な説明と適切な交付に努めたい」と話す。

 政府は相次ぐ不適切事案を受け、マイナンバーに関する省庁横断の情報総点検本部を設け、今秋までに「マイナポータル」で閲覧できる全29項目を対象に問題を洗い出す方針。一方で、自治体は情報がなく、住民からの問い合わせに疲弊する。島根県内の自治体の担当者は「総点検で、どんな指示が来るのだろうか」と不安を漏らす。