虚構として取り出されることで見えてくる社会の姿がある。中村文則「列」(「群像」7月号)は、社会のゆがみをデフォルメした姿で見せてくれる。「列」に並ぶようにレールに沿って前を目指すことを強いられ、「群れ」のなかの同調圧力と弱肉強食の競争へとさらされる。

▽群れと主体

 この小説は、「国民」や「労働力」として平準化され規範に従って没個性を強いら...