本当に間に合うのだろうか。2025年4月から半年にわたって開かれる大阪・関西万博の海外パビリオンの建設が遅れている。建築資材の高騰で各国・地域と建設業者の価格交渉が折り合わず、契約がなかなか成立しないためだ。
開幕まで1年9カ月。設計や仕様を決めてパビリオンを建設し、それぞれの国・地域が工夫を凝らした内装や展示を作り上げる。残された時間は限られている。
万博は五輪と並ぶ巨大イベントだ。運営主体となる「日本国際博覧会協会」、政府、地元自治体、経済界などが一体で準備しなければ成功はおぼつかない。資材確保や建設の人手不足を考えれば、事態は切迫している。同協会を中心にスクラムを組み直し、準備を加速しなければならない。
20年ぶりに日本で開かれる万博には153カ国・地域と8国際機関の参加が見込まれている。このうち、パビリオンを自分で設計し建設するのは約50カ国・地域に上る。
だが仮設建築に必要な申請はまだどこからも出ていない。パビリオンの準備がここまで遅れるのは想定しなかったことだ。
政府が出展する「日本館」の工事入札は、予定価格の範囲内で応札する業者がなく、随意契約に切り替えた。音楽や演劇の舞台になる「大催事場」も3回目の入札でようやく業者が決まった。海外勢のパビリオンの入札や契約交渉が難航することも予想できたはずだ。
この遅れを取り戻すには、博覧会協会が準備状況をしっかり情報開示することが第一歩になる。準備の遅れや資材高騰の実情を政府、大阪府・市、経済界に率直に伝え、足並みをそろえて対策を練るべきだ。
そのためには協会、地元自治体、経団連、関西財界のトップ会合を定期開催し、準備の進展を確認するのが有効だろう。
巨大プロジェクトの準備を阻むのは、官庁の縦割りや、官民の役割分担の曖昧さだ。会場整備にかかる1850億円は政府、大阪府・市、経済界が負担する。責任を回避したり、様子見を決め込んだりすることは許されない。
パビリオンの工事を円滑に進めるには、自治体の役割も大きい。会場となる人工島・夢洲への交通円滑化などに知恵を絞ってほしい。来年は物流の労働規制も強化される。人手不足は建設だけでなく、トラック輸送にも波及するだろう。スケジュールに追われ、無理な工事で重大事故や過重労働を引き起こすことがあってはならない。
海外の参加国との意思疎通も強化する必要がある。各国のパビリオンの設計や仕様の見直し、協会による建設代行、内装・展示の変更を支援する態勢も充実させねばならない。協会の人員増強だけでなく、各国の大使館や日本の在外公館、日本貿易振興機構(ジェトロ)の海外拠点との連携をもっと深めてほしい。
大阪での万博開催が決まったのは5年近く前だ。この間に国際情勢は大きく変化し、資材価格も上昇した。参加を辞退する国が出てもやむを得ない。もしそうなっても冷静に受け止め、準備を急げばいい。
「いのち輝く未来社会」を描く万博には関西圏活性化への期待もかかる。11月からは入場前売り券の販売も始まる。準備への不安は一日も早く解消するのは当然のことだ。