6月1日条件付き外来生物に指定されたアメリカザリガニ
6月1日条件付き外来生物に指定されたアメリカザリガニ

 子どもたちに人気のアメリカザリガニが6月1日、飼育はできるが、販売や放流はできない「条件付特定外来生物」に指定された。つまり、もし捕まえて家に持ち帰ったら責任を持って最後まで飼育しなければならない。夏休みに入り、ザリガニを自由研究の題材に考えている児童や、飼おうとしている人もいるのではないか。飼育方法や「触れ合い」法を専門家に聞いてみた。(Sデジ編集部・林李奈)

 

 

ザリガニの飼育方法

 条件付特定外来生物とは、2023年に環境省が新設した枠組み。これまでは在来種の生息に影響を及ぼす、アライグマやカミツキガメなど157種を「特定外来生物」に指定し、駆除の対象にしていた。アメリカザリガニは「特定外来生物」に指定されていなかったが、在来種や固有の生態系への影響が問題視されていた。ただ、既に爆発的に増えて家で飼育している人も多い。特定外来生物に指定してしまうと飼育が禁じられるため、アカミミガメとともに「条件付特定外来生物」に指定された。一度飼うと、命尽きるまで飼うことが義務となり、販売ができなくなった。

 では、どのように飼えばいいのだろうか。宍道湖自然館ゴビウス(出雲市園町)の飼育展示係の桑原友春主任に聞いた。桑原さんによると「飼育するのは他の生物より簡単、丈夫なので触れて観察もできる」らしい。飼育する場合は、用意するのは水槽、水、砂利。水槽は、エアーポンプで水中に空気を循環させるといいという。水は、水道水に入っている「次亜塩素酸カルシウム」(通称カルキ)はザリガニに毒のため、カルキ抜きをすることが必要だ。水槽に入れるのは、水草を食べてしまうため、砂利だけでよい。アメリカザリガニの寿命は飼育下では1年程度だが、環境によっては3年生きるものもいるという。

アメリカザリガニについて説明する桑原さん=出雲市園町

 アメリカザリガニは雑食のため、何でも食べるが、ゴビウスでは釣りにも使われる「アカサシ」を使用している。市販のザリガニのエサでもよい。放流は禁止されているため、逃げないように、ふたや重しをして管理をすることが重要だ。水槽を定期的に掃除し「大切に育てて、むやみに増やさないことが重要だ」と話した。

触り方のコツは?

 ザリガニを見ているとつい触りたくなる。ゴビウスでもタッチプールで展示している。桑原さんは「丈夫で、子どもたちや市民にとって身近な生き物なため」と理由を話す。

ゴビウスでは60匹以上のザリガニを展示している

 プールで記者も触ってみようとすると、いきなり後ろに逃げてしまいつかめなかった。恐る恐る何回もトライしていると、威嚇するように爪を天に向けていた。隣を見てみると桑原主任は慣れた手つきでザリガニを捕らえていた。桑原さんは「後ろに尻尾の部分を曲げて逃げるため後ろから、怖がらないで頭を持つようにすると持ち上げられる」とアドバイスした。

 桑原さんの言う通りに後ろから恐れずに手を伸ばし、ぐっと力を込めると捕まえることができた。一つ捕まえると楽しくなり、何匹も捕らえることができた。

コツをつかむとザリガニを簡単に捕まえることができる

 コツをつかむと、アメリカザリガニの腹で雌雄の判別が付くようになった。雌は身体に卵を抱えるために腹部に毛のようなふさふさした腹肢と呼ばれる器官がある。また、大きい個体が雄の場合が多い。爪の大きさも個体差があり観察するのは興味深かった。

 アメリカザリガニは外来種とはいえ、人により持ち込まれたもので個体自体に罪はなく、それぞれが懸命に生きている。捕まえて飼育する際は、時に「触れ合い」も楽しみながら、愛情を込めて大切に育ててほしい。もちろん最後まで。

<番外編>
ザリガニ食べてみた

 スウェーデン家具などを売り、フードコートも併設している大型家具屋のIKEAの全店舗(12店舗)では、スウェーデンの食文化を体験するために、夏の時期にアメリカザリガニを使用した料理を提供している。中国でも盛んに食べられており、食文化はアジアにもある。外来生物をおいしく食べることができれば、固有種を守ることにもつながる。実際にIKEA福岡新宮店(福岡県糟屋郡)で食べてみた。

 食べたのはザリガニ麻辣麺。中華麺の上に辛く味付けされた肉みその上にザリガニが2匹乗っている。大きさも10センチ程度のザリガニの可食部は、普段食べているエビより少なく、小指の第二関節程度の大きさしかなかった。爪の部分も固く食べることは難しかったが味は、エビのようなうまみが凝縮していて味が濃かった。ぷりっとした食感ではないが、かめばかむほど味が出てきておいしかった。アメリカザリガニは食用にできる。新たな発見だった。

IKEAで夏提供されているザリガニ麻辣麺、ゆでられたザリガニが2匹そのまま乗っている

<ザリガニ・アラカルト>
①販売も禁止に
 山陰のホームセンターいない春日店(松江市春日町)の水生生物担当の山根颯太さん(20)によると、これまで観賞用に品種改良したカラフルなザリガニを販売していたが、現在は販売できなくなったという。山根さんは「ザリガニは育てることが簡単で丈夫で見た目も良く、売れ筋商品だった、今では販売商品で簡単に育てることができる水生生物はメダカや金魚に限られる」と話している。

②在来種はニホンザリガニ
 在来種のニホンザリガニは、東北や北海道地方の一部地域にしか分布していないため、山陰では観察することができない。外来種では、ウチダザリガニというアメリカザリガニより大きいザリガニがいる。ウチダザリガニはまだ、山陰では生息が確認されていない。

ザリガニをホームセンターではザリガニを購入することはできないが、エサなどを購入することはできる