
「この2人が結婚するなんてって、みんな驚いてました。僕たち自身も予想外でしたけど(笑)」。そう話す田中瞬さんと、妻の茉莉杏さんは小中学校の同級生。卒業後はほとんど交流がなかったものの、それぞれ20代で地元松江にUターンし、偶然の再会から結婚に至りました。
都会と地元それぞれの想い
瞬さんは熊本の大学へ進学し、卒業後は広島の企業に就職。Uターンのきっかけは東日本大震災でした。「もし松江が同じ境遇になった時、自分が松江にいなかったら嫌だなって。故郷に錦を飾るじゃないですけど、都会で経験を積んで戻ってこようと思っていたので、それが早まった感じですね」
一方の茉莉杏さんは高校卒業後、ミュージカル俳優を目指して上京。短大、東宝の養成所を経ていくつかの舞台に出演しました。「都会は刺激的でしたけど、生まれ育った故郷が肌に合っているのも感じて。葛藤もありましたけど、両親の『帰っておいで』のひと言に肩の力が抜けてほっとして。一回リセットしようと帰ってきたんです」
都会で経験を積んだ2人の再会は同窓会。小学校の担任の先生に引き合わされる形で交際に発展。仕事でもそれぞれ新たなステージへ踏み出していきます。

故郷で見つけた新しい道
瞬さんは今、家具の製造やリペア、空間リノベーションを手がける『フラットスタイル株式会社』に勤務。「大学生の時、新聞に載っていたフラットスタイルの記事を親が保管していて、帰省したときに見せてくれました。それで興味がわき、店を訪れて手伝いをさせてもらったのが、つながりができるきっかけになりました。小さい頃からインテリアや古い家具が好きで、建築士の両親の影響もあるのかもしれません」
茉莉杏さんはリラクゼーション店『YUZKI』に勤めながらミュージカル『あいと地球と競売人』の振付助手を担当。「私が小学生のときに出演した作品です。みんなで一つの舞台を作り上げる感動を今の子どもたちに感じてほしくて。大人になってまた関わることができるのはとても感慨深いですね。子どもたちとふれあう中で私もたくさん成長させてもらっているし、表現する楽しさを感じている瞬間に立ち会える貴重な経験をさせてもらっています」

家族がすぐそばにいる幸せ
2人は颯君と尊君を授かり、瞬さんの実家の隣に自宅を購入。瞬さんがコツコツとリノベーションをして完成させた新居で、両親に見守られながら、仕事と家庭を両立しています。「好きな仕事ができて家族がそばにいて。生まれた土地に戻ることを選んでよかったと思います。両親にとっては孫にすぐ会えるし、妻は娘みたいだし、そういう環境が親孝行なのかな」(瞬さん)。
「お互いの両親が元気で近くにいて、海に山に湖に自然豊かな松江で一緒に子育てをしてもらえる。この環境って決して当たり前じゃないんですよね。共通の友人もたくさんいて今から老後が楽しみです。東京に出た時は、やりたいことは都会でしかできないと思ってたけど、巡り巡って帰ってきてよかったし、運命だったんだなって思います」(茉莉杏さん)
茉莉杏さんのたからもの「家族」

「夢を追いかけていたころは結婚願望ゼロだった私が、瞬となら自然に家族のカタチが浮かんだんです。瞬との不思議な縁から奇跡がいくつもいくつも重なって、子どもたちが元気に生まれてきてくれて。いつも見返りを求めず120%の愛情を向けてくれる我が子はなによりの宝物です。こうして、生まれ故郷でほっとする温かな環境で暮らせているのも瞬との出会いがあったから。恥ずかしげもなく運命ってあるんだなって思います」
瞬さんのたからもの「宍道湖の景色」

「めっちゃ普通かもしれないですけど、やっぱり宍道湖は特別です。祭りといえば水郷祭だし、子どもと自転車で走ったり、朝にパンを買って食べたり。生まれ育った土地の風景ですし、いろんな思い出があります。県外から帰って来た時も宍道湖が見えると『松江に帰ってきたー!』って実感したんですよね」
受け入れた側の話
井原孝夫さん(小学生時代の担任)

松江市立内中原小学校で、瞬君と茉莉杏さんが5、6年生の時に担任をしました。個性的な子が多いクラスで、2人ともキャラが立っていました。卒業しても定期的に集まって、私も呼んでもらって。こうやって卒業後も集まるというのは、島根だからこそだと思います。地元のいろんな縁がつながって、残っているからできるんだなと。子どもたちはもちろん、その保護者の方たちとも付き合わせてもらってね。教え子の子どもを抱っこするのは、教師の特権ですよ。今や、2人は教え子というより、友達や仲間みたいな関係です。楽しく人生を過ごさせてもらってありがたいですよ。

Profile
田中瞬さん/広島県▶松江市
田中茉莉杏(まりあ)さん/東京都▶松江市
共に1986年松江市生まれ。小中学校の同級生。茉莉杏さんは2010年に東京から、瞬さんは2011年に広島からUターン。小学校の同窓会で再会し交際に発展。結婚し、現在は5歳と0歳の2人の息子と4人暮らし。瞬さんは家具制作や空間デザインを手がける会社に勤務。茉莉杏さんはリラクゼーション店に勤務しながら、東京時代の経験を生かしミュージカル『あいと地球と競売人』に振付助手として関わっている。
(文:山若マサヤ 写真:七咲友梨)




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