NHK・Eテレの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」内で繰り広げられる人形劇「ファンターネ!」の物語は、松江市在住の脚本家・目次立樹(りっき)さん(37)が紡ぐ。娘の誕生を機に、2022年5月に東京都内からUターンして1年余り。古里での歩みや、日々の暮らしから得た着想を、劇中の随所にちりばめる。(Sデジ編集部・鹿島波子)

 

 1話約5分の物語が毎週月~金曜に放送され、うち新作2、3話の脚本を担当。締め切りが迫ると、自宅近くの喫茶店にこもって一気に書き上げることが少なくない。続くオンライン会議で、首都圏に住む脚本家2人やプロデューサーらと内容の精査や表現方法の検討をして作品に仕上げていく。創作したストーリーが初めて人目に触れる瞬間に「毎回すごい緊張して、しんどいですね」と本音を打ち明ける。

松江市内の自宅で執筆する目次立樹さん。毎週オンライン会議をつなぎ、内容を精査していく。

 

▽キャラクターも自身も多様性を生きる


 人形劇は2~4歳児向けで、ライオンの男の子「ルチータ」、カッパの女の子「みもも」、ひょうたんの「やころ」をメインキャラクターに据えた。それぞれ動物、妖怪、植物という設定と、互いに助け合ってファンターネ島で共生する物語に「多様性」というテーマを持たせた。

メインキャラクターの(左から)ライオンの男の子「ルチータ」、カッパの女の子「みもも」、ひょうたんの「やころ」(NHK提供)

 脚本業は「東京に体がなくてもできる」と思い、制作陣でただ一人、首都圏から離れて暮らす。地域の枠を超えた共作は「島根で働く理解があるからできた」と感謝する。

 キャラクター設定にも、地域色をエッセンスに加えた。サメをモチーフにしたおじさん、通称「クシャさん」は、メインキャラクターたちと出身地が異なり、「だわや」「だけん」「だで」と方言を話す設定にした。実在する方言との関連性は...