聞くといつも、50歳を過ぎたくたびれた男に若かりし日の気分をよみがえらせてくれるアルバムがある。アズテック・カメラの「ハイ・ランド、ハード・レイン」(1983年)。軽やかなギターが印象的で、ネオ・アコースティック(ネオアコ)と称されたバンドの爽やかな風のような一作だ。
アズテック・カメラは、スコットランド・グラスゴー近郊の町出身でボーカルとギターのロディ・フレイムを中心とした4人組。ロディが英国の名門インディーレーベル「ラフ・トレード」からこのアルバムを発表したのは19歳の時。収録曲のこの上ないみずみずしさも当然といったところか。
デビュー作にして代表作。全10曲、まさに捨て曲なしの名盤で、特にLP盤で言えば「Oblivious(邦題・思い出のサニー・ビート)」からのA面5曲とB面1曲目の「Pillar To Post」までポジティブでセンチメントな曲調が続き、何度繰り返し聞いたことか。
戻りたいと思っても戻れない青春のときめきのようなものが、この一枚をターンテーブルに載せると、にわかに立ち上がってくる。
若い頃を振り返ってみれば、このアルバムのようなはつらつとした日々を送っていたかというと、そんなこともなかったような気がする。人は過去を美化する生き物だと思ったりもするが、とにかく人生を前向きにさせてくれる一枚だ。(川)
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