7月初旬に出雲市で講演する機会があった。テーマは「なぜ、私たちは歴史を学ぶのか」。こんな硬い内容の話を聴くために貴重な休日をつぶしたくない、と思われても仕方がないが、母親世代の女性たちの熱心な準備のおかげで会場は満員だった。小学校時代の同級生、大学のソフトテニス部の仲間たち、島根のイベントでお世話になっている人たちとも再会できた。

 誤算だったのが、山辺浩司先生とも再会したことだった。もう人前で緊張しなくなった私も、28年ぶりに再会した横田高校の世界史の先生の前で歴史を学ぶ意義を語る状況に気付いた時には、手が少し汗ばんだ。

 山辺先生の世界史の授業はいつも魅力的だった。細身の長身。角刈りで眼鏡をかけ、...