島根県美郷町とインドネシア・バリ島マス村の友好協定締結30周年を記念し、町内の中学・高校生17人を含む総勢40人の町の友好訪問団が17~22日、マス村を訪ねた。訪問団に同行し、「神々の島バリ」を肌で感じた中高生の姿や、交流を地域課題の解決につなげる町の挑戦を追った。(川本支局・佐伯学)
乾いた涼風に乗ってバリ島伝統音楽「ガムラン」の神秘的な音色が広がった。18日にマス村で開かれた30周年記念式典。会場となった集会所でバリ舞踊「ルジャン・マス」を踊る美郷町の中高生の姿があった。村が急きょ用意してくれたという舞踊衣装の腰布を巻き、村の女性と並んで舞うと笑みがこぼれた。
マス村のダルマユダ村長が「あの子の踊りは上手だった」と後日褒めたのが、大和中学校3年の難波紗奈さん(15)。2021年に町民らで発足したガムランの楽団ミサト・サリの舞踊メンバーだ。難波さんは「演奏者と目が合ったらほほ笑んでくれて、踊りやすかった」とうれしそうに舞台を振り返った。
25周年記念行事以来、4年半ぶりに結成した訪問団は中高生を主役にした。というのも、かつて町内にあった邑智高校が修学旅行で村を訪問し、計300人以上が現地の高校生と交流してきたのに、同校の閉校で機会を失い、交流機運の停滞を招いたからだ。経緯を踏まえ今回、町は中高生の参加を募り、中学1年~高校1年が応じた。
記念式典後、中高生はバリのお供え物「チャナン」作りを体験した。チャナンはヤシの葉を重ねて皿を作り、赤や青、オレンジといった色鮮やかな花を飾り付ける。教えたのはマス村の中学生で、派遣前からオンラインで交流してきた。美郷町の中高生の手が止まると、村の中学生が笑顔で手伝う。最初は双方、遠慮がちだったが、やがて身ぶりや手ぶりも盛んになり、次第に心を通わせた。
翌19日、中高生は3班に分かれ事前学習で考えたルートを散策。落差が20メートルあるトゥグヌンガンの滝で邑智中3年、大浜圭吾さん(14)は「すごい迫力だ」と壮大な自然に魅了された。ハスの池に囲まれたサラスワティ寺院や古代の石窟遺跡ゴアガジャなど史跡や名所を巡り、市場では現地の人たちを相手に値切り交渉にも挑戦した。「冒険」を終え大和中3年、芦田瑠美さん(15)は「ルートを回りきれて良かった」と達成感を味わった。
中高生は10月、マス村から招いた訪問団を前に、今回の体験を発表する。邑智中3年、梅木咲季さん(14)は「バリが大好きになった。楽しかった思い出を町の人に伝えたい」と語った。
交流から浮かぶキーワードは「草の根」「身の丈」「自然体」。根幹に人と人のつながりがある。中高生が今後も楽しく交流を続けてくれるよう期待した。