日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」。毎年の庭園ランキングで、島根から多数ランクインする
日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」。毎年の庭園ランキングで、島根から多数ランクインする
ランクインした山陰両県内の庭園
ランクインした山陰両県内の庭園
日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」。毎年の庭園ランキングで、島根から多数ランクインする ランクインした山陰両県内の庭園

 米国の専門誌が2003年に日本庭園ランキングを始めて以来、18年連続1位の足立美術館(安来市古川町)をはじめ島根県内の複数の庭園が毎回、上位に入っている。安来出身者としてうれしく思う一方、疑問がある。「日本三名園」と言われる兼六園(金沢市)や後楽園(岡山市)、偕楽園(水戸市)をも上回り、島根の庭園が高く評価されるのは、なぜなのか。(吉野仁士)

 専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」(JOJG)は、米国在住のダグラス・ロスさん(60)と妻の合田玉青さん(55)が1998年に創刊した。2人ともかつて神奈川県に住み、日本庭園に関心があった。

 庭石や庭木の流通ルートがない海外で日本庭園の正しい知識の普及を図るJOJGは世界37カ国で約2千部発行。日本庭園に関心がある個人や施設、図書館などが購読しているという。

 庭園ランキングの正式名称は「しおさいプロジェクト」。名は2人がほれ込んだ、葉山しおさい公園(神奈川県葉山町)にちなむ。

 この庭園は近くの三ケ岡山を借景に、滝や茶室もある本格的な庭園にもかかわらず、知名度が低い。「隠れた名園は他にも多くあるのでは」。そう直感した2人は庭園の歴史や広さ、知名度ではなく、「今見ても美しく、心から満足できるかどうか」に重きを置いたランキングを考案した。

 審査はさまざまな国の約30人が担う。多くはJOJGでも記事を執筆する日本庭園愛好家。各自が自費で日本の庭園を訪ねて順位付けした結果を毎年末に集計し、発表する。審査する庭園は千カ所以上。当初はベスト20で始まり、10年以降はベスト50を選んでいる。

▽隠れた名園

 隠れた名園として掘り起こされたのが足立美術館で毎年、桂離宮(京都市)を2位に抑え、不動のトップ。同館を筆頭に島根県からは近年、7~8カ所が名を連ねる。2020年は3位・皆美館(松江市末次本町)、25位・由志園(同市八束町波入)、26位・湯之助の宿長楽園(同市玉湯町玉造)|といった具合だ。

 島根から複数がランクインする理由について、合田さんは「島根の庭園は剪定(せんてい)の技術など全体的にレベルが高い」と指摘する。

 さらに、名園が多いとされる東京や京都でなく、わざわざ足立美術館に足を延ばす審査員は相当熱心だとみて「日帰りなどせず、近辺の庭園も見るのでは」と審査員の目に触れる機会が多いと推察。事実、ランクインする島根の庭園は、足立美術館から足を延ばしやすい県東部ばかりだ。

 県東部の造園業者で組織する出雲流庭園保存会の竹田和彦副会長(46)によると、出雲地方の松は品質が良く、古くから庭木に使われ、剪定技術が発達した。さらに、島根は豊かな自然を借景とする庭園が多いといい「島根の環境を含めて評価されていると思えて、うれしい」と喜ぶ。

▽日本一の冠

 JOJGのランキングは足立美術館の客層を広げた。「『日本一の庭園』という冠ができたことは、とても大きかった」と同館広報部の武田航部長が語る。

 以前の同館の看板は、今も国内屈指の所蔵数を誇る近代日本画の巨匠・横山大観の作品だった。庭園も、愛好家から高い評価を受けていたが、大観の作品目当てに訪れた人が庭園を知るという流れが主で、来館者は高齢者が多かった。

 ランキングで日本一になると、庭園目当ての若年層や家族層が目に見えて増えた。ランキング開始時の03年度は1600人ほどだった外国人客は、多い年は約5万人にまで膨らんだ。

 現在、同館のホームページやパンフレットには「○年連続日本一」の文字が躍る。武田部長は「ランキングを重ねるごとに露出が増え、知名度が上がった」と恩恵を実感している。

 米国人に気付かされた島根の庭園や自然の魅力。古里が一層誇らしくなった。