難病で体が不自由な松江市在住の三好史子さん(26)が、東京・日本橋で21日にオープン予定のロボットカフェで接客業に挑戦する。分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を遠隔操作して来店客の注文を取ったり、飲み物を運んだりする。「体が動かなくても多様な働き方ができることを伝えたい」と意気盛んだ。
三好さんは、脊髄の運動神経細胞の異常によって筋力低下や筋肉萎縮が起こる脊髄性筋萎縮症(SMA)を患う。電動車椅子に乗って生活し、パソコンやスマートフォンの操作は1人でできるが、トイレや入浴など日常生活のほとんどで介助が必要だ。21歳から障害福祉サービスの「重度訪問介護」を活用し、ヘルパーの支援を受けながら1人暮らしをしている。
2018年に島根大で開かれたシンポジウムで、オリヒメを開発するオリィ研究所(東京都)の吉藤健太朗所長から、ロボットカフェの構想を聞いた。吉藤所長に就労の悩みを相談すると「カフェで一緒に働きましょう」と誘いを受け、同年に始まった実験へ参加するようになった。
カフェでは筋萎縮性側索硬化症(ALS)やSMAといった重度の障害や病気などで外出が困難な人たちが、スマートフォンやパソコンを使って高さ23センチのオリヒメや、全長120センチの自走式「OriHimeーD(オリヒメディー)」を操縦して接客する。
ロボットに搭載されたカメラやマイク、スピーカーを介して客と自由に話すこともできる。三好さんは当初、接客時の言葉遣いや振る舞い方に戸惑ったが、カフェの実験に計4回参加して自信をつけた。
21日に開店するのは常設実験店「分身ロボットカフェDAWN ver.β(ドーン バージョンベータ)」。一般向け営業は同22日からで、営業時間は午前10時~午後7時。約50人がロボットの操縦者として働く予定だ。
今ではフロア全体を見渡して指示を出すマネジャーの役割も担う三好さん。「外出困難者の可能性を広げ、多くの人に希望を感じてもらえるカフェにしたい」と前を向く。 (吉田真人)