編集者・ライター/稲田豊史氏
編集者・ライター/稲田豊史氏

タイパ化する世の中 倍速視聴から見えるZ世代の消費傾向
失敗を避け評判重視

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が11、12日、米子、松江両市であった。編集者・ライターの稲田豊史氏(49)が「タイパ化する世の中 倍速視聴から見えるZ世代の消費傾向」と題し、時間当たりの効率「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する、1995~2010年生まれの「Z世代」の考え方や消費動向を解説した。要旨を紹介する。

 映像作品を倍速や10秒ずつ飛ばして見る視聴スタイルが若者を中心に世界中で広まっている。21年3月の調査で20代男性の54・5%、女性の43・6%が倍速視聴をしたことがあると回答した。その割合はさらに高まっていると考えられる。

 要因として、定額見放題サービスの普及で視聴できる作品が爆発的に増えたこと、心情をほとんどせりふで説明する作品が増えたため飛ばして見ても内容を把握しやすいこと、友人同士の共通の話題として確認しないといけない作品が増えたことの三つがある。限られた時間で多くの作品の内容を把握しようとした結果、「タイパ」が重要視されるようになった。

 心理の根底にあるのはZ世代の「快適主義」だ。求められる正解に最適な方法でたどり着けなかったという失敗や、つまらない作品に時間を使ってしまった後悔、徒労感などの不快な体験を避けようとする傾向が強い。

 これは失敗した人に厳しい姿勢を向ける社会に応じて生まれた考え方だ。

 失敗を極度に避けようとするZ世代には次の四つの特徴がある。「分かりやすいもの」「直感的な表現」を求める点、世論や著名人の評判を重視する点、シンプルに手早く伝えないと情報を受け取らない点、文章よりも動画での説明を好む点だ。

 これらの特徴から、Z世代は商品やサービスを選ぶ際に世間の評価が高いものや著名人が動画で紹介したものを選択する傾向がある。商品そのものよりも評判を気にするということで、目立った欠点が少ないことを重視する。

 人口は団塊ジュニア世代の半分程度だが、その影響は無視できない。交流サイト(SNS)を駆使し、世代やコミュニティーを超えた拡散力があるためだ。Z世代に受け入れられやすい商品やサービスを提供することが今後ますます重要になる。

(中村和磨)