彫刻家の福江悦子(54)は10歳のとき、伯母からこう言われた。「おまえは生まれてすぐ、捨てられそうになったんだよ」

 北海道旭川市の生家はその頃、立て続けに兄妹(きょうだい)が生まれ困窮していた。家族会議が開かれて両親が決心を明かしたのだという。祖父に問いただすと「でもなんとかみんなで育てようってなったんだよ」と否定しなかった。

 自分はどうせ捨てられていた子なんでしょ―。母と口論になるとつい口走ったが、そのたびにはぐらかされた。中学生の時に問い詰めると、母は...