「SDGs」に関する首脳級会合=〓(?)日、米ニューヨークの国連本部(共同)〓(?)
「SDGs」に関する首脳級会合=〓(?)日、米ニューヨークの国連本部(共同)〓(?)

 2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する国連の首脳級会合がニューヨークで開かれた。15年の採択から折り返し点を迎えた目標の達成は「危機的状況にある」とし、各国が政策推進と国際協調を約束する政治宣言を採択した。

 日本では政治家の演説や企業のCMなどにSDGsの言葉があふれているが、目標達成に向けた真の取り組みが進んでいるかとなると、極めてお寒い状況にある。

 これまでの手法を大幅に見直し、社会と経済の根本的な変革を進めるというSDGsの基本精神への理解もほとんど進んでいない。安易にSDGsへの貢献などを口にするだけでなく、覚悟をもって抜本的な社会と経済の変革に取り組まなければならない。

 SDGsの進捗(しんちょく)状況に関する国連の評価では、17の目標に関する36の指標のうち「達成に近づいている」とされたのは五つだけ。20~23年に現状が「後退した」とされたものが健康や飢餓などに関するものを中心に九つもあった。

 新型コロナウイルスのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻が目標達成への取り組みを後退させ、「地球沸騰時代」と呼ばれるまでになった気候変動の影響が顕在化していることが大きな原因だ。政治宣言は、これらの危機を乗り越えるための国際的な団結や信頼感が失われ、貧富の格差が拡大していることに強い危機感を示した。

 日本の状況も深刻だ。SDGs生みの親の一人と言われる米・コロンビア大のジェフリー・サックス教授らがまとめた報告書によると、SDGs達成に向けた23年の日本のランキングは世界第21位と決して上位とはいえない。しかも前年の19位から後退した。

 リサイクルや気候変動、海と陸の生態系保全など環境問題に関する目標達成への取り組みが大きく遅れていると評価され、ジェンダー平等実現の遅れも指摘された。

 日本では確かにSDGsへの関心は高い。政治家や企業関係者の多くが胸にSDGsのバッジを着け、自社の取り組みが「SDGsの達成に貢献する」とPRする企業は多い。これらの動きを取り上げるメディアの報道も増えている。

 企業活動の場や教育現場で多くの地球的規模の課題への関心を高める効果があったことは評価に値するが、実際の取り組みとなると不十分であることは明白だ。持続可能な世界をつくるための重要な取り組みを、単なる目標へのひも付けや口先だけのPRに終わらせてはならない。

 「世界を根本から変えるための17の目標」というのがSDGsの合言葉だ。そのためには化石燃料依存や大量生産・大量消費経済からの脱却が不可欠だし、女性の意思決定への参加拡大や雇用形態の見直し、子どもや若者の貧困の解消など、現在の社会と経済を根本から変革する必要がある。だが、多くの指標が、今の日本ではこれに逆行するような政策が進んでいることを示している。

 SDGs達成に求められるものは、既得権益にしがみついて社会と経済の根本的変革を阻もうとする勢力からの抵抗を廃し、かつてない政策転換を進める政治的な意思だ。これこそが日本のSDGs達成の取り組みにおいて最も欠如しているものだ。