細田博之衆院議長への不信感が身内の自民党関係者の間でさえ、広がった原因はひとえに議長の立場を隠れみのに、説明責任を果たしてこなかった姿勢にある。
2021年11月、議長就任直後の細田氏は多弁だった。衆院選小選挙区の「10増10減」を巡っては、本来は議長として中立を保つべきであるにもかかわらず、「都会だけ(議員を)増やす地方いじめ」と異論を唱えた。
しかし、週刊誌が報じた記者らへのセクハラ疑惑や旧統一教会との関係性が問題になると、一転、公の場での発言を控えるようになった。党島根県連大会や国政報告会など、地元で説明する機会は何度もあったはずだ。
三権の長である議長の辞任という重大な決断も、結果的に報道を通じて伝わった。細田氏の立候補に向けて支援体制を協議する会合を開いた直後に報道を知った県議からは「ばかにしているのか」との批判が上がり、知らされていなかった党県連幹部は厳しい表情を浮かべた。
父の細田吉蔵元運輸相からバトンを受け継ぎ、親子で県政界に関わった期間は実に60年以上。官房長官や自民党幹事長、党清和政策研究会(現安倍派)会長などを務めた。地方の課題に対し、過疎法や有人国境離島対策、人口減少地域の担い手確保など法律制定を主に立法で手を打ち、実績を上げてきた。
政権や党中枢に身を置いて国政を動かし、島根の政治を支えてきたことは間違いないが、有権者への誠意を欠く姿勢は許されない。次期衆院選への立候補を目指すならばなおのことで、政治家として自身の言葉で説明責任を果たすべきだ。
(政経部・白築昂)