8月、日本大アメリカンフットボール部員の事件について、記者会見で謝罪する林真理子理事長(左)ら=東京都千代田区
8月、日本大アメリカンフットボール部員の事件について、記者会見で謝罪する林真理子理事長(左)ら=東京都千代田区

 日本大アメリカンフットボール部の薬物事件を巡り、大学側の対応を検証した第三者委員会が報告書を公表した。その中で、林真理子理事長ら上層部について「得られた情報を自分に都合よく解釈するなど、自己を正当化する姿勢」を強く批判。「ガバナンス(組織統治)が機能不全に陥り、不適切な行為が重ねられた」と指摘している。

 「アメフト部員が大麻を吸っている」との情報が保護者らから寄せられ、競技部担当の沢田康広副学長は今年7月、学内で調査し、部の寮から大麻のような不審物が見つかった。ところが12日間も自ら保管して警察に届けず、林氏や酒井健夫学長に報告しなかった。

 発見の1週間後、初めて沢田氏から事実を告げられた林氏は特段の指示はせず、理事会にも報告しなかった。8月に部員の男が大麻所持などの疑いで逮捕され、直後に記者会見で沢田氏は「自首させるのが大学の責務と考えた」と釈明。林氏も「隠(いん)蔽(ぺい)とは一切思ってない」とかばったが、報告書は「隠蔽体質を疑わせ、信用を失墜させた最大の原因」と指弾した。

 その後、林氏が沢田氏に辞任を迫るなど対立も表面化。対外的に十分な説明もなく、もはや組織の体を成していない。昨年夏に林氏の下で発足した新体制は早くも再生への期待を裏切った。信頼回復は容易ではないだろう。一から立て直しを急がなければならない。

 学生7万人のマンモス私大、日大は田中英寿元理事長の脱税事件など不祥事が続き、教育機関のイメージが大きく傷ついた。林氏は元理事長によるワンマン経営の弊害払拭を目指し「学生が肩身の狭い思いをしないようにする」として昨年7月、理事長に就任した。

 理事への女性起用など改革を進めていたが、そのさなかにアメフト部の薬物事件が起きた。しかし大学側は上から下まで保身や隠蔽に腐心し、あらゆる場面で改革とは程遠い姿勢が浮き彫りになったと言うほかない。

 最初に保護者から大麻使用の情報があったのは昨年10月。アメフト部では監督らが部員にヒアリングをし、複数の部員による使用の情報も出てきた。にもかかわらず、それ以上調べず、12月の保護者会で監督が「問題が発生しているわけではない」などと説明した。

 一方、林氏は今年7月に沢田氏の報告で調査結果を知り、部員が使用を自己申告したことも把握。さらに大学による大麻疑惑隠蔽を告発する手紙も届いたが、8月初めの理事会には「違法薬物は見つかっていない」「聞き取り調査をしている」と報告しただけだった。

 その2日後、逮捕者が出たため、日大はアメフト部の無期限活動停止処分を発表。ほどなく「部員1人の個人犯罪」として処分を解除した。だが警察が寮を再捜索し、9月初め再び活動停止処分にし、状況判断の甘さもあらわになった。10月には2人目が逮捕された。

 3年連続で私学助成金が全額不交付になり、学生からは就職活動への影響を懸念する声も相次いでいる。「近年も大きな不祥事を起こしたのに、到底理解できない」と報告書には、あきれ果てたような記述もあった。

 林氏は学生を不安と混乱の中に置き去りにした責任ときちんと向き合い、トップとして大学再生に取り組んでいく資格があるか、自らに問うてみる必要があるだろう。