高橋美香(49)が取材中にシャッターを押せなくなったのは、2001年1月のパレスチナ自治区ガザでのことだった。息子の遺影を胸に抱えた年老いた女性が、こちらを見つめている。

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 パレスチナは、イスラエルに対する抵抗運動「インティファーダ」の渦中にあった。重武装のイスラエル兵への抵抗手段は、投石や自爆覚悟の爆弾攻撃。占領地のいたるところで無残な死が積み重なっていた。

 高橋は当時26歳、留学生で写真家を目指していた。ガザの友人の紹介で会ったこの女性...