インド・デカン高原の大地を乗り合いバスが走る。1980年、東大3年生だった中野民夫(66)は、バスの最後部に1人で座っていた。

 人々が降りては乗り、また降りる様子をながめる。外には羊や牛がいて、のどかで雄大な景色が広がる。この人たち、この光景に二度と遭遇することはない。今ここにいる不思議、人間や自然へのいとおしさがこみ上げて涙があふれ、万物との一体感に包まれた。

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 バックパッカーとしてアジアを放浪してきた。精神世界にひかれ、インドの瞑想(めいそう)指...