国の特別天然記念物・トキを飼育繁殖する出雲市が14日、地元での放鳥を目指す方針を明らかにした。国内での野外放鳥は新潟県佐渡市のみとなっている中、環境省が他でも認める方針を決めたため。出雲市は年内に実行計画を定め、野外放鳥できる態勢を2030年までに整える。
同日の市議会本会議で、今岡久人議員(平成クラブ)の一般質問に金築真志農林水産部長が考えを示した。実現により、自然環境の保全と観光振興を両立したまちづくりにつなげる。
環境省は佐渡市のみで放鳥を認めていたが、生息数を増やすため「トキ保護増殖事業計画」を見直し、26年度以降に同市以外の本州でも放鳥させる方針を決定。放鳥が可能な地域の適性などについて、調査や検討を進めるという。
動きを踏まえ、出雲市は環境省が近く発表する「トキ野生復帰ロードマップ2025」に沿って、市トキによるまちづくり構想を改定する予定。
構想を基に放鳥に向けた環境整備、住民の意識醸成など、具体的な取り組みや目標値を定めた実行計画を策定する。
放鳥の可否条件については今後、環境省が詰めるという。
出雲市は2008年12月、環境省から佐渡の分散飼育地に選ばれ、現在、市トキ分散飼育センター(出雲市西新町2丁目)で13羽を飼育。12年から今月までに繁殖した43羽が佐渡で放鳥されている。
国内の分散飼育地は同市のほか、新潟県長岡市、いしかわ動物園(石川県能美市)、多摩動物公園(東京都日野市)となっている。(月森かな子)