田園で餌を探すコウノトリ4月18日、松江市上佐陀町
田園で餌を探すコウノトリ4月18日、松江市上佐陀町
田園で餌を探すコウノトリ4月18日、松江市上佐陀町

 国の特別天然記念物・コウノトリの飛来地が島根県内で拡大している。2017年以降、毎年、雲南市で営巣するほか、県西部にも他の個体が飛来し、これまで9市町で累計1100件以上の目撃情報がある。豊かな自然環境に引かれたとみられ、雲南市に次ぐ営巣地ができる可能性がある。地域おこしに生かせる半面、文化財保護法に基づく保護が必要で、自治体の反応には温度差がある。(多賀芳文)

 田植え時季を控える4月中旬、松江市郊外の上佐陀町に成鳥のコウノトリが姿を見せた。田園地でのんびりと餌をついばむ様子を近くの住民が見守った。一時は絶滅した種が再び、身近な存在になりつつある。

 人工繁殖に取り組み、05年には放鳥を始めた兵庫県立コウノトリの郷公園(兵庫県豊岡市)によると、コウノトリの野外個体は年々増え、27日現在211羽。個体が増えるにつれ、島根へも飛来が増えた。

 17年に営巣・繁殖地となった雲南市をはじめ出雲、松江、安来各市と邑南町▽18年に大田市▽19年に浜田市▽20年に益田市▽21年に奥出雲町|で、それぞれ初めて飛来が確認された。

 島根県立三瓶自然館サヒメル(大田市三瓶町多根)の星野由美子企画幹は、良い餌場を探して降り立ち、気に入れば定着する特性を踏まえ「個体の定着と飛来エリアの拡大は、餌が豊富で住みやすい土地である証拠だ」とひもとく。

 繁殖地が増える可能性が現実味を帯び、とりわけ、雲南市に近い自治体は関心が高い。

 出雲市では、斐伊川や神戸川付近でよく見られるという。市朱鷺のまち推進室の梶谷房生室長は「コウノトリの営巣は十分可能性がある」と強調。田畑の減農薬化など対策を進め、良好な餌場作りに力を入れる考え。特別天然記念物トキの分散飼育に取り組んできたノウハウも役立ちそうだ。

 奥出雲町でも目撃情報が増えた。町教育魅力課の永瀬克己課長は「電柱に巣を作ろうとしている、との声も入る」と定着の可能性を感じており、巣ができれば見守り体制をつくる構え。

 一方、保護業務の負担は自治体にとって悩みの種にもなる。実際、ペアが営巣・繁殖した鳥取市では、ひなへの足環装着の費用負担を鳥取県にも求めるなど市が対応に苦慮した。飛来エリア拡大に対し、島根県内の自治体担当者からは「口を大にして『歓迎』とは言えない」との声も漏れる。

 サヒメルの星野企画幹は、福井県などコウノトリを誘うために力を入れる自治体があることに触れ「自然に飛来する環境があるという価値を知り『見守りたいね』という機運が広がってほしい」と願う。