前衆院議長の細田博之氏の死去を受け、来年4月の公算が大きい島根1区補欠選挙を巡り、支援者に戸惑いが広がっている。公職選挙法改正で次期衆院選は新たな区割りとなる一方、補選は現行の区割りを適用するためだ。県政史上初の衆院補選と20年ぶりの区割り改定が重なり、補選前に可能性がある衆院解散・総選挙もにらみながら、政党関係者は前例のない戦いを迎える。

 「正直戸惑う支援者が多いだろう」。細田氏死去から一夜明けた11日、松江市内で今後の対応を協議していた自民党島根県連の絲原徳康幹事長が表情を曇らせた。

 昨年11月の衆院小選挙区「10増10減」の公選法改正成立に伴い、島根県内の2選挙区の区割りは変更になった。現行の2区から旧三刀屋、掛合両町、吉田村(いずれも現雲南市)、旧頓原、赤来両町(いずれも現飯南町)の旧飯石郡は1区に移る一方、現行1区の旧平田市(現出雲市)は2区となる。

 ただ、適用は「施行後初の衆院総選挙」と定められ、4月16日告示、28日投開票の公算が大きい島根1区補選は、現行の区割りでの選挙となる。

 旧掛合町の自民党支部は2区が地盤だった竹下登元首相、亘元復興相の兄弟を支え、約60年にわたって「竹下」の看板で戦ってきた。1区に移る次期衆院選に向け、支援者の意識も変わってきた中で現行の区割りでの補選が決まり、影山喜文支部長は「(補選で票は)入れられないけど、今後のことを考えると(政策を訴えに)入ってもらいたい」と望む。

 自民県連は今後、補選の候補者の選定に入る。絲原幹事長は「新区割りの有権者にも政策を訴える方法を考えなければならない」と強調。県選挙管理委員会によると、補選告示後に候補者が選挙区外で選挙活動することに対して公選法上は禁止する明文はないという。

 野党も頭を悩ませる。補選も立憲民主党が擁立する見込みの元職の亀井亜紀子氏(58)は新区割りとなる次期衆院選を見据え、1区に移る旧飯石郡内で4月から「青空集会」と題した対話イベントを開いてきたが、旧飯石郡は補選では2区のままになる。

 さらに新区割りでの選挙となる衆院解散・総選挙が補選前にあった場合、1区になることから「新旧の1区を両方とも回るようなパターンの活動も準備してないといけない」と気を引き締める。

 補選も共産党公認で立候補する新人の村穂江利子氏(55)を立てる党島根県委員会の上代善雄委員長は「比例票獲得を軸にやっている。補選と衆院解散・総選挙のどっちに転んでも1区、2区関係なく戦いを進める」と話した。

 (白築昂、高見維吹、原暁)

 

▼島根の衆院選小選挙区の区割り

 2000年の国勢調査を受け、定数が3から2に減り、02年に現行の1、2区になった。市町村合併を経て出雲、雲南両市は選挙区が分断しており、次期衆院選から、現行1区の旧平田市(現出雲市)が2区、現行2区の旧三刀屋、掛合両町、旧吉田村(いずれも現雲南市)、旧頓原、赤来両町(いずれも現飯南町)が1区に移る。