英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、価値観を共有する民主主義陣営の結束を確認し、新型コロナウイルス対策や発展途上国のインフラ整備支援などに国際協調を重視して取り組むことを盛り込んだ首脳声明を採択した。

 G7首脳声明としては初めて「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記し、新疆ウイグル自治区での人権や香港の高度な自治の尊重を要求。中国の不公正な経済慣行を指摘し、透明性のあるサプライチェーン(供給網)の構築を目指すなど、経済安全保障の観点も含め、中国を強くけん制する内容となった。

 米国のバイデン大統領は民主主義国家として、「専制主義国家」と呼ぶ中国やロシアと対抗する姿勢を打ち出している。その意向が強く反映された声明と言えよう。

 米国がトランプ前大統領の自国第一主義から国際協調へ回帰したことは歓迎したい。とはいえ、対中戦略でG7が一致しているわけではない。各国とも経済的に中国と深い結び付きがあり、気候変動問題などでは中国を排除はできない。

 中国に対して、東・南シナ海への海洋進出など摩擦を生む行動の自制や、経済活動の透明性の確保などを促すのは当然である。だが、その実効性を上げるには、対立ではなく対話が必要だ。中国を巻き込んだ対話の枠組みをどう構築するのかを真剣に検討すべきだ。

 対面でのG7に初めて出席した菅義偉首相は、中国の人権状況や海洋進出に「深い懸念」を表明し、米国に足並みをそろえた。だが、日中の経済的なつながりは深く、東・南シナ海での衝突は、直ちに日本が巻き込まれる有事に発展する。

 首脳声明は台湾問題の「平和的解決を促す」とも言及した。日本として平和的解決を後押しし、地域の平和と安定を導く外交構想が求められる。

 首脳声明は、G7が「民主主義、自由、法の支配、人権の尊重」など基本的価値を共有し、「ルールに基づく国際秩序」を構築すると強調した。

 新型コロナを巡っては2022年中にパンデミック(世界的流行)を終息させるとし、途上国を中心に10億回分のワクチンを供給する支援策を表明した。独自のワクチン外交を進める中国やロシアを意識したものだ。

 途上国のインフラ整備支援でもG7として新たな構想を打ち出すと表明。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が途上国の重い債務負担や環境への悪影響を招いているとの認識に基づき、対抗する姿勢を明確にした。

 しかし、フランスのマクロン大統領は「G7は中国に敵対するものではない」と述べ、「中国に対処する共通戦略を構築できた」とするバイデン氏との認識の違いを浮き彫りにした。

 今後の国際秩序の構築を巡って、バイデン氏の描く「民主主義対専制主義」という構図では対立は深まるばかりだ。G7が国際協調にどういう役割を果たせるのかが改めて問われることになる。

 菅首相は東京五輪・パラリンピックについて「新型コロナの感染対策を万全にし、安心・安全な大会を実現する」と強調。首脳声明は五輪開催への支持を表明した。

 しかし、国内では感染対策に懸念の声は収まっていない。対外公約の前に、国内で情報を公開し、国民に丁寧に説明するのが首相の責務だ。