1996年に英テクノユニットのケミカル・ブラザーズが発表したシングル曲「セッティング・サン」は、ロックとテクノが「悪魔合体」した傑作。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったオアシスのノエル・ギャラガーがボーカルを取り、極太のビートと繰り返されるサイレン音により覚醒していくような感覚は忘れがたい。「君は僕の中に住む悪魔」で始まる歌詞も好きだった。
ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」に曲の雰囲気が似ているが、90年代仕様に魔改造された印象。この頃はデジタルサウンドとロックが急接近し、音楽史に新しいページが書き加えられているという高揚感があった。ロックフェスにテクノユニットが出演することが、何ら不思議ではなくなった。
97年にリリースされたセカンドアルバム「ディグ・ユア・オウン・ホール」は、1曲目の「ブロック・ロッキン・ビーツ」から5曲目の「セッティング・サン」まで切れ目なくアッパーな流れが続く。途中ミニマムな数曲を挟んで、あらゆるものが体温を取り戻していくような夜明けを感じさせる「ホエア・ドゥ・アイ・ビギン」につながるという、文句の付けようがない仕上がり。購入後、愛車のCDチェンジャーに1年以上セットしたまま、車内で爆音を聞きながら何度もドライブした。 (銭)