飯間浩明氏
飯間浩明氏

「ことばはなぜ変わるのか」
批評よりも理由考察を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が11、12の両日、浜田、益田両市であり、日本語学者で国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明氏(56)が「ことばはなぜ変わるのか」と題して講演した。言葉は時代の変化に合わせて変わらざるを得ないとの考えを述べた。要旨は以下の通り。

 若い人が言葉を乱して困ると批評する人がいる。私はそうは思わない。世の中が変わり、言葉も変わらなければ道具として役に立たなくなる。変わってこその言葉だ。

 新しい言葉は多く生まれている。編纂に参加している三省堂国語辞典第8版の新語の一つに「そうなんですね」がある。21世紀に入り広まった言葉で、当たり障りのない相づちとして使われる。例えば「2回試験に落ちた」と言われ「そうなんですね」と返す。深くは関わらない、一歩引いた感じで若い人がよく使うようになった。

 街を歩くと、新しい言葉に出合う。「有人レジ」は今の時代ならではだろう。従来は「レジ」だけで通用した。それがセルフレジの登場で、有人とあえて説明する必要が出てきた。

 タルタルソースがたっぷりを意味する「タルだく」、大盛りを超える「地獄盛り」は面白い発見だった。批判されることが多い「やばい」「超」なども程度表現を豊かにしたい、インパクトを与えたいという思いが背景にある。SNS(交流サイト)で使うため、より短く簡略化する傾向も見られる。

 反対に使われなくなった古い言葉もある。「アベック」は後ろ暗い語感から避けられるようになり、明るい感じの「カップル」に置き換わった。言葉の変化をとがめるのではなく、理由を考えるようにしてほしい。

(吉田雅史)