平年より22日も早く、5月15日に梅雨入りしてから1カ月が過ぎた山陰。幸い、大きな被害が出るような大雨には襲われず、この時季特有の蒸し暑さに悩まされることも、今のところ少ない。このまま梅雨明けに向かってくれればと思うが、そう甘くはないか▼梅雨から夏の高温多湿は昔から悩みの種だったらしく、兼好法師(吉田兼好)も『徒然草』に<家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまひ)は耐へ難き事なり>と記したほど。冬の寒さよりもつらく感じていたのは意外だ▼民俗学者の神崎宣武さんによると、外国人には「木と草と紙の家」に映る昔の日本家屋は高温多湿な気候に合わせ通気性と湿気調整を優先させた結果なのだという▼例えば、天井や壁に使う杉板は湿気の調整に優れているし、障子や襖(ふすま)の引き戸は通気性を考えた建具。畳は冬場の寒さ対策と通気性の両面を兼ね備えているそうだ。さらに草履や下駄(げた)も高温多湿な風土に合わせた履物で、履物を脱いで家に上がる習慣が玄関を発達させたらしい▼今ではエアコンを使えば年中、快適に過ごせる。エレベーターがあれば職場や住まいが何階でも苦にならない。多くの電気を使うことで生まれた快適な「密集・密閉空間」。しかし、それがウイルスに狙われた。気候や風土とどう向き合うか、いま一度考えてみる機会なのかもしれない。(己)