宗うきを製作する正田宗雄さん。視認性を重視してシンプルな塗装を心がける=島根県邑南町中野
宗うきを製作する正田宗雄さん。視認性を重視してシンプルな塗装を心がける=島根県邑南町中野
宗うきの製作過程。角材を削った後、重りを埋め込み、塗装して完成となる
宗うきの製作過程。角材を削った後、重りを埋め込み、塗装して完成となる
大和ミュージアムのシンボル「戦艦・大和」の模型。艦首の底の丸みが宗うき開発のヒントになった=広島県呉市(資料)
大和ミュージアムのシンボル「戦艦・大和」の模型。艦首の底の丸みが宗うき開発のヒントになった=広島県呉市(資料)
宗うきを製作する正田宗雄さん。視認性を重視してシンプルな塗装を心がける=島根県邑南町中野 宗うきの製作過程。角材を削った後、重りを埋め込み、塗装して完成となる 大和ミュージアムのシンボル「戦艦・大和」の模型。艦首の底の丸みが宗うき開発のヒントになった=広島県呉市(資料)

 浮きは釣りで最も重要な道具の一つだ。しゅっと海中に消えた瞬間、釣り人は心を躍らせ、さおを合わせる。企画「いわみアカデミア~研究の現場から」の第11回は、邑南町で、オリジナルブランド「宗(むね)うき」を手掛ける正田宗雄さん(70)に浮き作りの極意を聞いた。 (板垣敏郎)

 ■無駄のない動き

 水を入れた深さ40センチの円柱形の容器に、真上から宗うきを落とすと、音もしぶきも立てずに着水し、底へ到達してから上昇。水面に頭だけを出し、ぴたりと止まった。水泳・飛び込み競技の一流選手を連想させる無駄のない動きだ。

 

 容器は正田さんが各浮きの浮力確認でいつも使用する。「釣りの達人になると手首の微妙な返しで、着水時に浮きが全く音を立てない」と胸を張る。静かな着水は、海中での抵抗の少なさにつながるため重視する。少ないと感度が良い。

 浮きは、釣り人に魚の当たりを知らせるのが主な役割だ。魚が釣り針の餌を食うと海中に引き込まれる。波や潮の流れなど他の要因でも浮き沈みすることがあり、魚によるものなのか迷うときがある。抵抗が少なければ魚が餌を食ったときだけ勢いよく消し込み、迷わずさおを合わせられる。警戒心の強い魚が違和感なく餌を食うことにもつながる。感度が宗うきの追求のしどころだった。

 ■3年でたどり着く

 1990年ごろに浮き作りを始めた正田さんが試行錯誤したのが形状だ。たどり着くまで3年を要したという。ポイントは下部にある棒状の足(長さ約7センチ)の付け根。丸まった本体の底は一見、水の抵抗を受けそうだが実際は逆だった。

 最初はラッパの先端同士をくっつけたような形の浮きを作っていた。見た目は滑らかだが、着水時の音やしぶきが気になった。

 抵抗を減らそうとするあまりラッパ部分をどんどん細くし、やがて鉛筆のような形に。「浮力は弱いし安定感も悪かった」と振り返る。

 思わぬところに課題解決のヒントがあった。「戦艦大和」の本だ。艦首は鋭くなく、底部に丸まった出っ張りがある。流体力学的には分からなくても、旧日本海軍が採用した形だから、と試すと抵抗が減少。宗うきの開発につながった。

 ■二つの波を相殺

 船は先端部が水面をかき分けて進む。その際、引き波と呼ばれる波が生じ、抵抗となる。大和の出っ張りは引き波のさらに前方から別の波を生み出す。二つの波が相殺されて抵抗を減らす原理で「現代でも大型タンカーなどで採用されている」と大和ミュージアム(広島県呉市)の杉山聖子学芸員が解説する。

 科学的にどれだけ理にかなっているかは分からないが、他分野から積極的に学ぶ姿勢が新しい浮きを作らせた。正田さんは「宗うきで爆釣したとか、ぜひ使いたいという声を聞くと本当にうれしい」と話す。一個一個に入念な塗装を施し丁寧な仕上がりを心掛ける。

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 次回は7月3日の掲載を予定しています。