寒風が吹く島根中央高校(島根県川本町川本)のグラウンド。バットスイングを繰り返す球児に声をかけた。「よし、そうだ」
言わずと知れた名将。浜田、大社両高校で春夏通算9度、甲子園で采配を振った。2004年度に旧川本高(現島根中央高)に赴任し、定年退職後も同高を指導する。現在、男女の硬式野球部統括顧問を務める。
島根県大会や甲子園でしびれる勝負を繰り広げた印象が強いが、島根中央高では19年の女子硬式野球部創部に深く関わった。公立では全国3校目だった。
当時は全校の4割に満たない女子生徒の確保が課題で、打開策として浮上したのが女子野球だった。先行事例のある女子のサッカー部やラグビー部を創部する案もあったが、野球の潜在力を感じ強く推した。少子化で学童、中学野球では女子選手の力を頼りにするチームが少なくない。半面、高校進学した女子選手の受け皿は少なかった。
「やるなら最初に。二番煎じは絶対にだめだ」。そんな信念で創部...