仙台空港から出雲空港に到着したFDAの最終便=出雲市斐川町沖洲、同空港
仙台空港から出雲空港に到着したFDAの最終便=出雲市斐川町沖洲、同空港

 フジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)が8日、出雲空港(出雲市斐川町沖洲)を発着する仙台便の最終便を運航した。2018年に就航し、観光需要の創出や県民の移動の選択肢を広げる役割を担ったが、エネルギー価格高騰を受けた経営状況の悪化などで廃止を決めた。静岡便も同日の運航をもって休止した。関係者は路線の縮小を惜しみ、復活を願った。

 8日午後、仙台発の最終便が出雲空港に到着した。降り立った松江市東持田町の会社員、細田由紀夫さん(64)はこれまで計5回、仙台便で東北の旅を楽しんできたという。「東北には雄大な自然がある。これからも行きたいが、行きにくくなる。とても寂しい」と口にした。

 仙台便は18年4月、静岡便は同3月に就航。アクセスが良くなかった東北地方などと山陰を結ぶ直行便として期待された。両便とも1日1往復で、搭乗率はコロナ禍前の19年度に仙台が63・4%(搭乗者数計3万8532人)、静岡が68・5%(同4万1713人)となった。

 20、21年度はコロナ禍による利用減で30~40%台に低下。22年度以降は回復に向かったが、両便は観光利用の比率が高く、他路線に比べて冬場に減少する傾向があり、FDA側は採算ラインの搭乗率65%の確保が容易ではないと判断した。燃料費の高騰に加え、円安により海外で行う機材整備の費用が膨らんでいるのも要因だという。静岡便の再開時期は未定。

 23年度は運休を控えた駆け込み需要などで、4~11月の搭乗率は両便ともに7割台に上昇。コロナの5類移行で観光需要の拡大が期待されていただけに、落胆する声も大きい。

 玉造温泉旅館協同組合(松江市玉湯町玉造)の内田哲生事務局長は「東北から温泉に訪れる人も多かった」とし、松江市内でホテルを経営する浅利観光(江津市浅利町)の植田祐市社長は「全国で人流が活発化し、東北や静岡からの旅客も伸びる余地があった」と残念がった。

 高速道路や鉄道網が脆弱(ぜいじゃく)な山陰地方にとって空路の縮小は交通政策上も痛手となる。島根県交通対策課の山影一茂課長は「FDAに対し、路線復活を引き続き働きかけたい」と強調した。 (取材班)