多芸多才ゆえか。ジャズ・フュージョンのギター奏者ジョン・マクラフリンはこれ見よがしで協調性のないところが面白い。例えば1979年のライブで結成したユニット、トリオ・オブ・ドゥームでの演奏(スタジオ収録音源を加えて2007年にCD化)。自作曲「ダーク・プリンス」ではカオスな速弾きでベース奏者ジャコ・パストリアスをかすませ、ジャコの持ち曲「コンティニューム」でも遠慮なく前に出る。
所属バンド、ウェザーリポートでリーダーのジョー・ザビヌル(キーボード奏者)と張り合い、鼻息の荒かったジャコをここまで押さえ込むとは一体何者か。
英国出身。ジャズ、ロックのほかフラメンコやインド音楽にも傾倒した。デビュー前にギターを手ほどきした教え子にジミー・ペイジがいるらしい。ちなみに後にはジェフ・ベックにも影響を与え、フュージョンの世界に引き込んだ。
ジャズの帝王マイルス・デイビス(トランペット奏者)に気に入られて頭角を現した。「ライト・オフ」(マイルスの1970年のアルバム「ジャック・ジョンソン」に収録)では、ロックの味付けを求めたマイルスにきっちりと応え、渋い演奏で引き立てる。得意の速弾きはなく、意外な横顔を見た思いだ。
自らのバンド、マハヴィシュヌ・オーケストラを結成してスタイルを確立した。バイオリン、キーボードとの速弾きの応酬が聴きどころで「ヌーンワード・レース」(71年のアルバム「内に秘めた炎」に収録)がお勧め。別のバンド、シャクティもかっこいい。ギター、バイオリンの速弾きとインドの太鼓タブラの連打を組み合わせ、狂乱度が増した。「ラ・ダンス・ドゥ・ボヌール」(76年のアルバム「ハンドフル・オブ・ビューティー」に収録)が特にいい。
技巧に走りすぎとの見方もある。周囲への気配りもない。ロックギター奏者カルロス・サンタナとの共演でもしかり(連名の73年のアルバム「魂の兄弟たち」に収録)。2人が敬愛するジャズサックス奏者ジョン・コルトレーンの名曲「至上の愛」のカバーで、出だしの泣きのギターはマクラフリン。お株を奪われたサンタナが一歩遅れてギターを泣かせまくるさまが面白い。
控えめなマクラフリンは考えにくい。マイルスとの共演を除けば、フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアとの共演くらいか。2人のライブを収めた「ライブ・アット・モントルー1987」(2016年にCD化)では互いに相手を引き立てながら、楽しむ姿が伝わってくる。敬意ゆえか、相性なのか。興味深い。
(志)













