失敗やトラブルが続いた日本のロケット開発にようやく光が見えた。
次世代の新型主力ロケット「H3」の2号機が打ち上げに成功した。昨年3月、1号機の打ち上げが失敗。原因の特定には至らなかったものの、可能性がある複数の問題点を改善したことが功を奏した格好だ。
H3は、2001年に登場したH2Aの後継機として宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した2段式の液体燃料ロケットだ。開発中の小型固体燃料ロケット、イプシロンSと共に、今後の衛星や探査機の打ち上げを担う。
当初、H3の1号機は20年度に打ち上げを予定していた。しかし、1段目の主エンジンとなる「LE―9」の開発が難航。昨年2月、打ち上げに臨んだが、LE―9の点火後、電気系統にトラブルが発生したため、固体ロケットブースターに点火せず、中止となる。
同3月にやり直した打ち上げでは、1段目のLE―9は正常に動作した。だが、2段目のエンジンに点火せず、予定の高度に達しないと判断され、地上からの指令で機体が破壊された。
原因を調べたところ、エンジンを制御する電気系統に想定を超える過大な電流が流れたため電源供給が遮断され、点火しなかったことが判明。過大な電流の原因として点火装置の破損など三つのシナリオが浮上した。
JAXAによると、2号機を早期に打ち上げるため、原因の特定にはこだわらず、全てのシナリオに対応する再発防止策を取ったという。
2段目のエンジンはH2Aのエンジンを改良したもので、信頼性は高いとされていた。そこに落とし穴があったわけで、JAXAは今後、実績のある機器であっても、不具合の「種」が潜んでいないかどうか確認することになった。
22年10月に起きた小型固体燃料ロケット、イプシロン6号機の打ち上げ失敗も、衛星に長年使われてきた燃料タンクに原因があった。実績のある機器を使うことはコストやリスクの低減につながる半面、油断を生む。見落としがないか、幅広く点検すべきだろう。
JAXAは、飛行中のロケットから地上に送信されるエンジンの電気系統の計測データが少なく、原因究明作業が手間取ったことへの反省から、計測データを充実させる方針も打ち出した。さらに、電気系統のトラブルが相次いだことを受け、ロケット開発の初期段階から、衛星など他の部門からも電気系の専門家を集め、知見を生かしていくという。専門家の育成も課題といえる。
1号機には、災害対策に役立てるため約280億円を投じ開発した地球観測衛星「だいち3号」を載せ、無駄にしてしまった。今回は小型衛星2機とロケットの性能を確認する機器を載せた。3号機以降は「だいち4号」や火星衛星探査機「MMX」などの打ち上げが控える。気を緩めず、信頼性を高めてほしい。
H3は打ち上げ費用をH2Aの半分の約50億円とする目標を掲げ、需要が拡大する衛星打ち上げビジネスへの参入を目指す。米国では再使用型ロケットによる低コスト化が進みつつあり、かなり厳しい競争となる。
H3の開発には約2200億円が投じられた。国内需要を満たすだけに終わらぬよう、関係者は知恵を絞る必要がある。