第六章 来去来(四十)

「ほな、北(きた)久(きゅう)太(た)郎(ろう)町(まち)は」

 生家の松仙堂がある町の名を口に上(のぼ)せたが、師匠は黙って書状を畳み、上下をひっくり返して...