島根県内で昨年6~9月の熱中症患者の救急搬送は410人で前年同期の421人と大差なかった。新型コロナウイルス禍で外出自粛があったにもかかわらず、熱中症患者数が前年並みとは、なぜなのか。日本気象協会によると、暑さに体を慣らす「暑熱順化」ができていなかったためだという。今夏も昨夏同様の暑さが予想される中、県内の医療関係者が暑熱順化を呼び掛けている。 (原暁)

 同協会「熱中症ゼロへ」プロジェクトによると、暑熱順化は、暑くなる前に適度な運動をして体温を上げ、体を暑さに慣らすこと。熱中症対策の一つだが、まだ広くは知られていない。

 暑熱順化を行うと、発汗量の増加や汗に含まれる塩分濃度の低下などの効果が得られる。汗によって体内の熱を逃がしやすくなるため体温の上昇を防ぎ、熱中症に強い体をつくれる。

 ウオーキングやジョギングはもちろん、なるべく階段を使うといったちょっとした心掛けでも効果はある。ウオーキングは1回30分、ジョギングは1回15分を週5日程度が目安。ストレッチや入浴でもよく、体調に合わせてしっかりと汗をかくことがポイントだ。

 同協会の担当者は「無理のない範囲で徐々に行うことが大事」と強調。体が暑熱順化するには2週間程度かかるため、夏の暑さが本格化する前から取り組むことが重要だという。

 運動指導や整体を手掛ける「からだサポート」(松江市西川津町)の代表で、理学療法士の袖本雄介さん(42)も「今までの熱中症対策より踏み込んでいる。予防に有効な手立てだ」と暑熱順化に着目。コロナ禍での外出自粛で「体が弱くなっている。熱中症にならないための予防を、今からすることが大事だ」とみて、通院患者や、スポーツの指導者らに勧めている。