
―2024年で創立60周年を迎えます。
11月に記念式典を予定し、学生たちが主体的に企画する独自イベントの準備も進めています。
約9千人の卒業生がおり、ものづくり産業を中心に県内外のさまざまな企業などで活躍しています。
「学んで創れるエンジニア」の育成を合言葉にして、先端技術を担う人材を輩出しています。

―企業から求められる人材の育成に対する考えを聞かせてください。
5年間あるいは7年間の学生生活で特に身につけてほしいと考えているのが、地域課題解決に向き合う力です。
企業の経営者や首長、研究者らを学内に招き、講義や交流を行い、社会との接点を増やしたいと考えています。
少子化の今、一人一人が地域社会で担うべき役割と責任は相対的に高まっています。地域課題の気づきと解決の両方について、高専で学んでいる知識を駆使して、自らのアイデアを創造する機会を提供していきます。
―6月には海外の教育機関の1カ月研修を受け入れます。
国の事業の一環として、タイ国内の高専の学生や教職員ら約20人の留学を1カ月間受け入れます。最新設備による実験・実習のほか、地元企業に出向いて行う現場研修などもあり、教育研究面での刺激に期待しています。
交流に必要な意思疎通は英語で行うことになります。エンジニアは社会に出た後はグローバルに活躍する機会も多く、コミュニケーション力を身に付ける貴重な体験になると思います。

―行政と連携し、ものづくり分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めています。
あらゆる現場で人手不足が深刻化しており、AI(人工知能)やプログラミングの利活用による省力化や経営改善を求める声が根強くなっています。
産業DXだけでなく、例えば橋や道路といったインフラ施設の老朽化について、建設DXは新設や改修に必要な設計・施工・維持管理を迅速かつ効率的に行うことができます。
地域にノウハウを提供し、地域とともに課題解決に導く教育研究機関でありたいと考えています。

高等専門学校(高専)は、本科5年間の一貫教育、さらにその後の専攻科2年間によって「学士」が取得でき、高度な専門性を持つ人「財」を育成するユニークな高等教育機関です。
創立60周年の節目を経て、松江高専は、新時代の様々な課題にチャレンジし、実践力・現場力と創造性を兼ね備えた人「財」が大きく成長する学びの場であり、輝く未来社会の創造を先導します。

和田 清=岐阜県出身。2023年に現職に就任。
名古屋大学大学院博士課程を経て工学博士の学位取得。名古屋大学助手、岐阜高専教授等の計35年間、教育研究に従事。
専門は河川工学、水環境工学、防災工学等により技術士(建設部門)取得。高専教育における高度化、国際化等により(独)国立高等専門学校機構理事長賞(一般部門)を受賞。
前職は宮崎県の都城高専校長。