長期化する新型コロナウイルスの感染まん延で自殺や窮乏などが深刻さを増す中、政府はようやく対策に本腰を入れ始めた。1億総活躍担当相を担当閣僚とし、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を新設。厚生労働省や文部科学省などの職員を集めて省庁横断で取り組む態勢を取り、支援団体代表らを招いた緊急フォーラムも開催した。

 もともと1月下旬の国会審議で国民民主党が孤独担当相を置いて生活困窮者に対する支援を拡充するよう求めた。その時、菅義偉首相は「担当は厚労相」と受け流したが、2月に入ると一転、その主張を丸のみした。自民党は特命委員会で対策の検討に入り、公明党も対策本部を設置した。

 首相は経済成長を優先し「公助の前に自助」と強調してきたが、秋までには実施される衆院選に向けて看板政策にしようという思惑も透けて見える。ただコロナ禍で見えてきた課題は▽女性や若者の自殺▽非正規で働く人の解雇・雇い止め▽ひとり親家庭の困窮と子どもの貧困▽ドメスティックバイオレンス(DV)―など多岐にわたる。

 昨年4月に初めて緊急事態宣言が発出されて以来、それぞれ状況は日々悪化しており、早急に効果的な支援の具体策を打ち出す必要がある。縦割りになりがちな担当府省庁をうまく連携させ、支援からこぼれ落ちてしまう人を出さないようにできるかが問われよう。

 警察庁によると、2020年の自殺者数は2万1077人。前年比で908人増えた。年々減り続けてきた自殺者が前年を上回るのは09年以来のことだ。男女別で見ると、男性が11年連続で減少する一方、女性は増加に転じ、7025人と過去5年で最多となった。

 今年1月も女性の自殺者は525人を数え、前年同月比で30人増と増加傾向は続いている。背景の一つに不安定な雇用がある。女性はパートやアルバイトなど非正規で働く人が多くコロナ禍で雇い止めに遭ったり、勤務シフトの減少で収入が落ち込んだりして追い詰められ、孤立していく構図が浮かぶ。

 内閣府の有識者研究会は女性への影響が特に深刻とし「女性不況の様相」と指摘している。総務省の労働力調査では昨年10~12月期、正社員は14万人増加したが、非正規は78万人も減少。うち50万人は女性だった。とりわけ、シングルマザーの場合、困窮で子どもの将来が閉ざされかねないと懸念が広がっている。

 支援団体には「食事の回数を減らした」「死にたい」などと悲痛な声が寄せられている。新学期を控えて入学や進学の準備で支出が増える、この時期には現金給付などの支援が必要になろう。

 コロナ禍の影響は経済面にとどまらない。内閣府によると、DV被害の相談件数は昨年4~11月の各月で前年比の約1・4~1・6倍となり、8カ月の合計は約13万2千件で過去最多。児童虐待の深刻化につながる恐れもあり、相談体制の拡充や相談員の待遇改善を急がなければならない。

 昨年は小中高生の自殺者も過去最多になるなど、社会のひずみが次々と噴き出した。中にはまだ実態がよく分からないものもある。各府省庁が情報やデータを突き合わせ、支援団体の協力も得て実態を詳しく把握し、支援がきちんと必要とする人に届くようにしてほしい。