鳥取県日南町の産業を支えた木炭で焙煎(ばいせん)したオリジナルブレンドコーヒーが完成した。1928年創業の萩原珈琲(神戸市)と町が連携して実現した。販売開始を前に町内で試飲会があり、関係者が香りや味を確かめた。
日南町大宮地区はたたら製鉄と木炭産業で栄えた。カシやクヌギの良材で作られた「大宮炭」は大正、昭和期の全国品評会で上位を独占。70年代初めに姿を消したが、全国唯一の町立林業学校「にちなん中国山地林業アカデミー」の生徒が年間0・8トンほど生産している。
炭に着目したのが、自社工場で炭火焙煎にこだわる萩原珈琲。萩原英治社長(41)の母親が日南町出身の縁で、町に使用を打診して実現した。コーヒーで地域と人をつなげたいとの思いを込めて「つながるブレンド」と名付けた。
このほど町役場であった試飲会で萩原社長が誕生までの経緯を説明し、関係者に振る舞った。エチオピアとグアテマラ、ブラジル産の豆をブレンドし、フルーティーで軽やかな味わいが特徴。中村英明町長は「後味がすっきりしていて木炭の香ばしさも感じる」と太鼓判を押した。
火おこしから焙煎まで町産の炭のみを使用する。萩原社長は「日南町産の炭は火付きがよく、投入するタイミングや火力の調整が難しいが、その分、焙煎の出来は素晴らしい」と話した。同社は売り上げの5%を寄付し、日南町の森林整備に充ててもらう。
100グラム入り740円で、年間300キロの販売を目指す。10日から道の駅にちなん日野川の郷で販売する。萩原珈琲のオンラインサイトでも購入できる。(藤本みのり)