将来的に「消滅の可能性がある」として896自治体が2014年に公表された時、衝撃を受けた。20~30代女性の減少率に焦点を当てた試算は目にしたことがなく、「消滅可能性」という強い言葉は危機感をあおった
あれから10年。民間組織「人口戦略会議」が同様の考え方で、消滅の可能性がある744市町村を発表した。外国人住民の増加を背景に14年と比べて改善が見られるとする一方、「少子化基調は変わっていない」という
東京での記者発表と関連するシンポジウムを取材した。クローズアップされたのは、島根県で消滅の可能性がある市町村が10年前の16から4に激減したこと。動画でスピーチを寄せた岸田文雄首相は激減した市町村数に言及し「地域ぐるみの子育て支援や若者の地方移住促進など地道な取り組みの成果が表れている」と述べた
とはいえ、地元の受け止めとはギャップがある。丸山達也知事は「日本全体の問題なのに、自治体ごとに取り組むべき課題のように誤った世論誘導をしている。ナンセンス」と指摘した
「消滅可能性」ではなくなった12市町村のうち9市町は、今回の試算でも20~30代女性が20年から30年間で40%以上減る。人口減少対策の成果が出た実感は乏しい。10年前の公表は国全体で議論するきっかけとなった。今回こそは危機感をあおるだけでなく、東京一極集中是正など大胆な改革につなげたい。(吏)