馬上から弓を引く射手の真っすぐな姿勢と満ちる気迫。的を射抜けば、会場一体となっての拍手喝采。父の付き添いで、軽い気持ちで見た「流鏑馬(やぶさめ)」にすっかり魅了された。
7日にあった島根県津和野町の鷲原八幡宮の神事。国内最古とされる広大な馬場で、「弓馬術礼法小笠原流宗家」の協力を得て執り行う古式は、満開の桜と相まって時代絵巻そのものだった。
興奮冷めやらぬまま国の重要文化財で保存修理工事中の社殿へ向かい、裏山の「大杉」を参拝。幹回り8・7メートル、高さ40メートルに及ぶ巨大なご神木は、樹齢600年以上とされ、焼き打ちや落雷を逃れ、どんと頼もしく、全てを見守るようにそびえている。
居合わせた人たちと、大杉のエネルギーを共有していると、あるグループに「この道(中国自然歩道)を30分歩けば津和野城跡、太皷谷稲成神社まで行けますよ。バスでここまで戻ってこられるから」と魅力的な山歩きの誘いを受けた。
「島根には松江、浜田、津和野と三つの城下町があるが、正直言って津和野が一番その風情を残す」とは、流鏑馬神事で来賓のあいさつをした丸山達也県知事。標高367メートルの霊亀山に築かれた城跡から見下ろす山陰の小京都の街並みは、それこそ絵巻のようだろう。津和野駅を発着する運休中の観光列車・SLやまぐち号も来月再開される。時間の制約があり断念した山歩き。大型連休に再訪してみようか。(衣)