出雲市の神西湖、差海川で採れるヤマトシジミが今シーズン極度の不漁に陥っている。ここ10年間で最少の2017年度の同期と比べても6割しかない。関係者は漁場環境の悪化に加え、昨秋の台風で湖底がかき回されたのが一因とみる。シジミ漁師にとっては死活問題で、先行きを不安視。島根県内有数の産地だけに、原因究明と漁場環境の改善が急がれる。 (松本直也)
「こんなに少ないのは、めったにない。組合の維持にもかかわる」
神西湖漁業協同組合(出雲市神西沖町)の赤木努代表理事組合長は、漁獲の不振に危機感を募らせる。
6月30日は66人が漁に出たが、定められた4時間で一日の漁獲制限23キロを採ったのは数人にとどまった。例年1時間で23キロが採れる場合もあるが今季は難しい。漁師の間では、漁獲制限まで採って「何時に帰ったか」が例年の話題だが、今季は「何キロ採ったのか」に変わってきたという。
組合によると、12年度以降の年間漁獲量(2月~翌年1月31日)は、17年度に100トンを割ったが、それ以外は130~198トンで推移。ところが、今季は2~5月でわずか7トンと、20年度同期の24%、17年度同期と比べても60%しかなく、年間漁獲量100トンに黄信号がともっている。
原因は明確ではないが、指摘されているのが昨秋、九州から朝鮮半島へ通過した台風10号による影響だ。南風で湖底の堆積物が舞い上がり、大量のシジミが死んだ可能性がある。個体数の減少は、翌年以降の漁獲量にも響く。赤木組合長は「産卵されたものが秋から来春にどれだけ採れるのか」と気をもむ。
漁場環境も悪化の一途。60年ほど前は5、6メートルあったとされる水深は、堆積物のため平均1・8メートルと浅くなり、水流が悪くなった。
県水産技術センター内水面科は、湖の北と南の2地点で調査し、20年度から個体数の減少を確認しているが、原因は不明だ。松本洋典専門研究員は「例年夏になると大きなサイズが出てくる。今後の漁獲推移を注視したい」と話す。
組合は、県や市の協力で13年度から、堆積物を砂で覆う事業を始め、漁場の保全、拡大を図っているが、急場しのぎでしかない。このため県や市に水の流れが改善するよう、堆積物除去の要望も検討する。
赤木組合長は「流入する水の量と質を変えることが大事。周辺住民の理解を得ながら湖周辺の環境改善を考えることが必要だ」と訴える。
神西湖産シジミ
神西湖と差海川で採れるヤマトシジミ。出荷サイズは、殻の厚さがMサイズ13ミリ、Lサイズ15ミリ以上と粒が大きい。湖は日本海に近く、差海川から海水が入るため、平均塩分濃度が高く、うま味が強い特徴がある。















