政府が7月下旬の交付開始を予定する新型コロナウイルスワクチンの接種証明書について、イタリアやフランス、ギリシャなど十数カ国との間で日本からの入国時に使用できるよう調整していることが分かった。合意できれば、陰性証明や入国後の隔離が不要になる。複数の政府関係者が4日、明らかにした。当面、日本帰国時の2週間隔離は維持される見通しで、夏の観光旅行などでの利用を拡大する壁になりそうだ。

 政府は相手国からの日本入国時にも、ワクチン接種歴による隔離免除を当面容認しない方針。このため、シンガポールやイスラエルなど相互に免除を求める国とは交渉が進んでいない。関係者は「日本は感染やワクチン接種の進捗(しんちょく)状況から、まだ水際対策を緩和する状況にない」と指摘する。

 各国間の往来再開を巡っては、欧州連合(EU)が1日、域内共通のデジタル証明書の本格運用を開始した。ただ日本政府関係者は、感染力が強いインド由来のデルタ株を警戒。「デルタ株の流行が収まるまで隔離の相互免除は難しい。日本での本格運用は当分先になる」との見方を示した。

 世界保健機関(WHO)は、ワクチンが全世界に公平に供給されていない現状では、接種証明書を入国時の条件として義務化すべきではないとの姿勢を示している。

 接種証明書はワクチンパスポートとも呼ばれ、経済界が早期導入を求めていた。氏名や旅券番号、ワクチン接種日などが記載される。交付希望者は、住民票がある市区町村に申請書を提出し、接種記録が確認できれば交付を受けられる。当初は書面で交付し、電子化も検討されている。